クリア後の感想と評価: 真・三国無双8 (AVG 4.6点)

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  • ストーリー:4点
  • グラフィック:5点
  • サウンド:5点
  • ゲーム性:5点
  • 作り込み:4点
10段階評価。6点以上でお勧め。
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ゲーム概要

派生作品まで含めると、一体何作出ているんだという三国無双シリーズの第8作。三国志演義を題材としたアクションで、1対多の戦いを特色とします。この手のワラワラ雑魚が沸いてくるゲームでは、先駆けとも言える作品ですね。

反面、シリーズのマンネリ化が言われて久しい部分もあり、過去に何度か方向転換が図られましたが、その度に失敗してきた感はあります(3や5)。結果として三国無双2路線のゲームが数多生まれることにはなりましたが、本作ではオープンワールド化を目指して、無双5以来の大きな方向転換が図られています。

大規模な一枚マップ、クエスト制の導入があり、アクションの刷新が行われています。ゲームとしてのコンテンツは膨大になり、飽和気味にはなりましたが、全体の質やテンポという意味で大きな問題を残しています。

感想と評価

ストーリー

  • 少年漫画的な三国志ワールド
  • オープンワールドには相応しくない列伝形式
  • 時系列のぶつ切りが酷い
  • 無駄に長いし、中身の無いイベント
  • キャラクター描写が稚拙
  • 新キャラなのに空気!

三国志ファンはまぁ納得しないだろうなという内容ですし、オープンワールドだったらそもそも間違っているだろうという部分があります。不足が多すぎて時系列は混乱し、人間関係もまともに描写できていません。少年漫画的な描写は味付けレベルの話なので評価には関わりませんが、ぶつ切りが酷すぎて三国志の入門作にもなっていないのが問題です。

オープンワールドとうレベルデザインにおいては、世界観を作ることが主で、人物は副になります。時勢を表現するために人間関係の描写は必要であるものの、それに関わらない部分は極力省く必要がありますし、一人の人間を追いかけるようなやり方は適当ではありません。まして90ものキャラクターをフォローするなど、到底無理であったと思います。

今作のストーリー描写は三国無双2の路線を踏襲していますが、それ故に広いマップ、80年という年月にイベントが散らばってしまって密度に問題が生まれています。たとえ多少の雑さが生まれるにしても、勢力別に分けられていた三国無双3の路線で詰めるべきでした。それにIF展開と、武将毎の個別イベントを加え、キャラチェンジが同勢力間ならシームレスにできるようにすれば良かったかと。

またオープンワールド路線でいくなら、当時の中国における価値観は極端な齟齬が無い限りは描写すべきでしたし、力押しこそが正しいという世界観を守る必要がありました。そういったバックボーンが希薄なので、曹操がヒールになっていないし、劉備がおかしな人だし、孫権がうじうじした小物になっています(孫権は史実準拠だと、酒好きのダメ君主なので、正しいと言えば正しいんですけど……)。

あと策、策、連呼させる展開は無双というゲームにおいて矛盾がありますし、馬鹿っぽく見えるので止めておいた方が良いです。小手先の策に頼るのは小人の証拠だって偉い人が言ってます。

グラフィック

  • 自然の描写はよく出来ている
  • 構造物の描写が微妙
  • 櫓が、マジでただの櫓
  • 雑なイベントシーン
  • 手堅い旧武将のデザイン
  • 浮いている新武将がチラホラ

オープンワールドの土台となる地形や、自然の描写は最も力が入っています。リアリティとゲームのちょうど良いバランスを保っており、見た目のデザインとしては優れています。反面、城郭や櫓の見た目は簡素すぎて差別化が出てきおらず、戦場を彩るには迫力に欠けています。また街の内部はぺらぺらで、住民の生活色がまるでありません。

武将のデザインは4辺りのデザインに回帰した感が強いです。まぁ三国無双5が変化のための変化を入れすぎて、失敗した感が強いので、そこから6、7と順当に戻ってきた感じです。そういう意味では流れに従ったわけですが、5での失速からようやく脱却したとも言えます。

最近追加された武将に関しては、相変わらず方向性に迷っている感じがあります。晋の勢力はまだ統一感がありますが、後から三国に追加された郭嘉、荀彧、李典、楽進、王異、法正、関興、関銀屏、朱然、呂玲綺など勢力において浮いている、他との差別化ができていない武将は多いです。関索、鮑三娘などは登場から3作目にしてようやく形になった感があるので、次回作ではもう少し形になるかもしれませんが、無駄にキャラクターを増やしすぎたり、時系列が伸びすぎた関係から、ある程度の刷新が必要になっています。

シリーズ開始当初だと若手だった陸遜も、末期まで扱うようになった今となった今となっては若手?な世代になってしまったため、違和感が残る出で立ちとなっています。これは陸遜だけではありませんが、あと10歳くらい歳を引き上げた方が良い武将は多いです。多分、若造扱いされた樊城の戦い、夷陵の戦いを反映したんでしょうけど、近作ではそういう描写自体が減っているので意味喪失しています。

サウンド

  • 従来作を踏襲した良スコア
  • ムービーシーンの数に対してバリエーションに欠ける
  • CVに難有り

従来通りの良スコアはあるものの、ゲーム全体が間延びしたので、印象に残りにくくなりました。無駄にムービーシーンが多いので、使い回しと違和感が残ります。

CV面はリテイクしなかったんじゃないかという雑さがあります。全体量が増えていて時間が危うかったのか。どこかうろ覚えになっていますが、人名の読み間違えもあった気が……。年齢的、配役的に声を出すのが辛そうな人も多いので、配役を変えるか、キャラクター性を変えるか、無理なく纏める必要性に駆られています。

ゲーム性

  • アクション面が改善
  • 敵兵の配置が散らばり過ぎで密度が不足
  • 装備集めが快適
  • 形だけのオープンワールド
  • 時系列が長く伸びすぎている
  • 探索要素が面白さには繋がっていない
  • 要らなかった鍵縄

アクション面はステートシステムによって操作系が統一され、柔軟な立ち回りができるようになりました。トリガー、フロー、リアクトとそれぞれに長所短所があって、この点では明確に進歩したと言えるでしょう。次回作でもぜひ継続して欲しいところ。

反面、オープンワールドゆえに実装したのだろう鍵縄、奇襲はゲームデザインとして失敗しています。これらはプレイヤーに自由度を与えましたが、クリエイターサイドに大きな足枷となって、戦場を再現するにマイナスに働いています。何でもかんでも鍵縄で解決するので、前線を上げるメリットがありません。三国志特有の攻城兵器も全てが形骸化しました。奇襲も武将毎に向き不向きがあれば良いのですが、プログレッションに発展性がなく、差別化も出来ていないので宜しくない。

オープンワールドとしてもかなり不完全で、おおよそユーザーの期待に応えられたとは思えません。従来作からみれば少し増えたぐらいの敵兵ですが、マップが巨大化しすぎたので密度が大きく下がりました。敵味方の武将が勝つことも、敗退することもなく、ダラダラしたゲームプレイがここに極まっています。

マップが広くて、探索する余裕がなくなるからという判断なんでしょうが、これによって受けたマイナス面は計り知れません。味方が戦力として必要だったり、イベントのキーになっているのなら、拠点を落とす価値もありますが、そういう事情も無いので無味簡素です。武将視点に世界を巡り歩くというのは、完成まで辿り着けば優れたゲームになったでしょうが、やはり計画に無理がありました。扱う題材の分量や経年を考慮しておらず、形になるまでには途方も無いリソースが必要になります。個人を自由に動かすという部分は、他のオープンワールドゲームを真似た結果であるものの、三国志という題材とはすこぶる相性が悪かったです。

作り込み

  • 広大で起伏に富んだ一枚マップ
  • 量だけがあって、質がまるで伴わない
  • クエストの雑さ、テンポの悪さ
  • キャクターの成長要素が希薄、個性が伴わない
  • 動きの無い戦場
  • 意味の無い友好度
  • フレームレートが安定しない
  • テクスチャー等の読み込み遅れ
  • イベントが多いためロードが多発する
  • おまけでしか無い新要素

新しいゲームとしての第一歩は踏み出しましたが、マップの制作によって力尽きた感じで、それ以外の要素が軒並みお座なりになっています。取り敢えずマップを作ってみて、そこからどういう風にイベントを配置し、都市を配置するか考えるというのは、オープンワールドの正しい設計ではありますが、実装面で旧来作を踏襲しすぎているのは時間切れ故なのか。

城郭の設計には工夫が見られず、重要な拠点と呼ぶには難があります。またクエストの多くも行き当たりばったりに敵を倒すだけに終始しており、同勢力の武将の逸話を題材にするなどの方向性は見えません。結果として触りだけの三国志となってしまい、風土や価値観といったオープンワールドとして表現すべきものまで踏み込めなかった印象です。

三国志という題材を活かすのなら、色々と独自の要素が必要だったと思われますが、取り敢えず時系列の圧縮、城や勢力ごとのプログレッションは必須として、自身が操作するキャラクター以外を成長させるシステムあたりは欲しかったです。

本作では武将毎のの列伝のみになっていますが、紀伝体に従った本紀――勢力プレイをメインにする方がオープンワールドとしては無難でした。武将が自力でアイテムを拾うシステムも、金山や豊かな田畑に置き換え、周辺の城郭に紐付きして勢力が大きくなっていくという表現だとそれらしさが生まれます。勢力の拡大が天下統一という大目標に繋がるので、それに歴史イベントや武将毎の個別イベント挟む形にするのが、限られたリソースを有効活用するベターな手法ではないかと愚考します。

オープンワールドへの挑戦は評価しますが、その実装に難が残っていて、方向転換を有耶無耶にした故、旧来作より良いゲームになったかは怪しいところになりました。

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総括

三国志のオープンワールドという巨大すぎる計画の第一段階としては、そこまで悪くないと思います。ゲームとしての体は成しておらず、この段階でリリースしてしまったことには問題がありますが、方向性としては間違っていません。

色々と考え直すべき要素が多く酷評されて当然ではありますが、挑戦することには大きな価値があり、意味のある失敗だったと思います。まして従来作の形に戻すとか割と論外なので、売上げが悪かったからって日和らないか危惧しています。

まぁ、挑戦するにしてももうちょっと良い題材があっただろうとは思いますが、知名度等々を鑑みると仕方なかったのか。時系列を圧縮する必要のない、項羽と劉邦や、個人プレイで大丈夫そうな水滸伝とかの方がよりオープンワールド向きではありました。

三国志はバックボーンはあるけど、やっぱり年月が掛かり過ぎだし、勢力図がコロコロ変わるから、やりにくい側面はあるんですよね。五胡十六国とかに比べれば、遙かにマシなんでしょうけど。

※ 五胡十六国(三国志の時代から50年後くらい。司馬昭→司馬炎→血みどろのデスマッチで乱世は全然終わってないんだよなぁ……。

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コメント

  1. アバター 匿名 より:

    なんというかこれは、当時の価値観を無視して書いたストーリーでしょうね。
    歴史上の人物を描いてるんだから、もっと気をつけて扱わないといけないと思います。

  2. アバター 匿名 より:

    完全に駄作だった・・・
    ・やりこみ要素皆無
    ・操作キャラの活躍がストーリーと全く無関係
    ・どのキャラを使用してもトリガー攻撃&ボタン連打とやることは変わらず
    ・オープンワールドといいつつ瞬間移動では長いロード時間発生

  3. アバター ほのか より:

    どこのストーリーをプレイしても、ある程度のキャラは使用したいですね。

  4. アバター 匿名 より:

    無双シリーズは三國好きでキャラデザインが好きだからずっとやってきたんですけど、相変わらず一部のキャラの扱い悪過ぎ・・・まるで魏、晋が正しく、蜀がおかしなことやってるようなストーリーで、やってて気持ち悪いです。開発の押したいキャラをごり押ししてるだけのゲームにしか見えません。歴史ゲームの開発がこんなことしていいんですかね?せめて公正な立場から三國の人物を描いてほしいです。

  5. アバター 匿名 より:

    仰る通りです。
    バトルフィールド内で戦う古い習慣からオープンワールドに舵を切った点は良かった。
    ただ方向性が良いとしても、バグが多く細部が適当なのが…。
    感動シーンも台無しになる所がチラホラ。
    どの街や村も同じようで特色がないのも残念だ。
    開発陣の各担当が指示された内容で淡々と作って、それらを繋ぎ合わせて、ハイ完成で出された感。実際にプレイして改善案を出し合ったりはしなかったんだろう。
    これはβ版と思ってる。

  6. アバター オサン より:

    確かな感想だと思いますが、内容を総括すると三國無双8ではなく求めてる内容はエンパイヤでは?三國無双8でエンパイヤを作るならだと感じました。今回のオープンワールド化は続けて欲しいです。新基軸での失敗はコラボ作品で散々やらかしてますが次回作があるなら確実に良化してますし5は駄作に納得ですが3はそんなに悪くなかったと思ってます。
    5は次回に持ち越すまでもなく駄作だったと認めたから止めたんじゃないかな?
    今作は歴史準拠で無双でオープンワールド化を考える作で続くなら良化されて欲しいかと。
    エンパイヤと区別化しなくて良くなる可能性も秘めてますし現在のシミュレーション三國のアクション版として役職での区別化も図れるアクションゲームになる可能性もあると思うからです。リアルタイムシミュレーションと無双アクションの融合、政策での強化などね。
    次回作を期待したいという願望ですが

  7. アバター 匿名 より:

    概ねこの感想の通りだと思います。
    巷のオープンワールドブームに乗っかった結果の微妙な立ち位置というところでしょうか。
    仁王と違って看板ナンバリングなので何年も掛けられなかったというのもあるでしょう。

    エンパイヤーズ前提で作ってあるのならまだ多少目はあるのかな、と思いますが、
    コレに(有って無い様なとは言え)内政を絡めるのがまた少し難しそうな。

  8. アバター 匿名 より:

    これを見るとMHWは上手くやったなと思えますね。
    携帯機向けに従来仕様のナンバリング、据置機向けにワールドという選択も出来るようになったわけですし。
    ベースのコンセプトがそれぞれ違うので無双が下手を打ったとは思いませんが、
    密度の要素を手放してまで無双+オープンワールドをナンバリングに持ってきたのは茨の道といいますか。。
    そのあたりは無双を捨てきれなかったKOEIの悪手かなと。

    オープンワールド三国志には凄く興味ありますが、危惧されている通りに次回は従来仕様に戻すのではないですかね・・
    まあ、オープンワールド化は選択であり進化ではないと、私は思っています^^;