クリア後の感想と評価: デス・ストランディング(AVG 5.5点)

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  • ストーリー:5点
  • グラフィック:8点
  • サウンド:6点
  • ゲーム性:4点 (-1)
  • 作り込み:5点 (-1)
10段階評価。6点以上がお勧め。
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ゲーム概要

KOJIMA HIDEO GAMES

荒廃した世界で配達員をしているマリオ(演:ノーマン・リーダス)は、やっかいな顧客を抱えていました。

それは「私をビーチまで迎えに来て」という、それはタクシーに頼めよというアホな注文をしてくる幼馴染みのビーチ姫(演:リンゼイ・ワグナー)の存在です。

人に頼まれたら断り切れない流され体質なノーマン・リーダスは、よく分からない仮面や、ゾンビムーブで迫ってくる大統領に推しきられ、アメリカを繋ぎ直すという大それた計画に巻き込まれました。

ポンプ的存在のBB(演:赤ちゃん)と共に、仮面のテロリストや、BBに固執するストーカーのクリフ(演:マッツ・ミケルセン)が、ひとつまみ程度に襲ってくる配達へと出かけます。

外には岩とコケばかりで何も無いですし、映画でも見てなければ我慢できないレベルの単純作業を繰り返すことになるサム。出先の顧客達がねぎらってくれますが、感謝の言葉だけでチップはくれない。

テロリストをサンドバッグにするとき「なんで俺だけに運ばせるんだよ!」と叫ぶくらいに鬱憤が溜まってきますが、コミュ症なので言い返せないし、退職届も出せない。そんなちょい駄目親父を熱演するノーマン・リーダスを眺めるロードムービーです。

レビュー

ストーリー

  • SF的な王道
  • デッドマンのキャラクター性
  • 蛇足な展開が多い
  • テーマに説得力が無い
  • 実は何も考えてなさそう……

努力は認めるけど、構成に難有りの世界系

根幹や世界設定、終盤の展開などは一昔前のSFを概ね踏襲しています。それに死後の世界を絡めたことだけが目新しいかなって感じで、大筋は王道の展開だったと思います。

筆者の意図も分かりますし、テキストの物量も十分にあるので、やる気は認めて良いと思います。ただし、構成や見せ方には色々と問題が残ります。良い部分もあるけど、駄目な部分も相当に目立つから、第三者にはあんまり勧められないってのが正直なところです。

ハートマンのエピソードは、停滞していた物語が動き出す気配を感じられる良パートなんですが、問題なのはそれまでの全て。

オムニバス的な顔見せばかりで話に動きが無いので、物語の核心に迫っていかない冗長さが目立ちますし、話があちこちに派生するので没入感が途切れやすい。間に長い運搬作業を挟むと尚更なので、削るところは削ってコンパクトにまとめた方が良かったでしょう。

後半に入ると、物語を二転三転させるためか、強引な会話誘導をするパターンがけっこう目立ちます。核心を語るワンマンショーもスケールの大きい話をしているのか、小さい話をしているのか一貫性がない。

悪者を作らない努力も合わさって、スピリチュアル的な胡散臭さがやたらと目立つことになりました。

ムービー部分だけでも8時間を超える長さなんですが、全編通して様々な失敗が見受けられ、やる気はあるけど、空回りしている感が拭えない作品になっています。

コミュ症サム ――主人公に向かない

人物の描写に丈を割いているように見えて、劇中ではあんまり変化がないので、魅力的に描けているとは言いにくいです。

特に主人公のサムが顕著なんですが、孤独は悪い状態であるという前提から話が進むので、その内面が今ひとつ見えてこないです。物語のテーマとの兼ね合いとはいえ、主人公がコミュ症すぎて、なんだコイツ……以上のことが感じられない。

主人公のサムが他者に影響を与えないし、表面的な付き合いしか持たないことで、色々と制約が生まれたことが災いしています。関わるキャラクター達のモノローグ主体になって、会話劇としての面白さが不足する原因にもなりました。

フラジャイル、ヒッグス辺りはサムの同業者ですし、元から顔なじみにしておけば、ヒッグスの変心などを明確に描けたし、因縁を明確にできたんですけどね……。

絶滅体に関しては、もうフォローのしようがない。いくらオーバーロードであっても想像力の欠如や、行動の支離滅裂さをフォローできてないので、ご都合主義のための犠牲になってしまった。

そんな中で主人公のパートナー役であるデッドマンは例外で、明確に劇中で成長していて、主人公の足りない部分を補っています。なんというか、おっさんがヒロインのゲームになっています。

グラフィック

  • 世界観を生み出すアート
  • ふんだんに盛り込まれたムービー
  • 実際の人物を上手く取り込んだキャプチャー
  • デジタル・アンチエイジング
  • ロケーションの変化とバリエーション不足
  • くどい演出

死者の国を写実的に表現するのに成功しており、いわゆる土台の部分はしっかりしています。ストーリ-、ゲームプレイの平凡さで、それを生かし切れてないというのが残念ではあるのですが、最大の評価ポイントです。

実在の人物を取り込んだキャプチャー技術はかなり優れており、実在の人物より遙かに若い状態で再現するアンチエイジングも完備。これに関しては将来的に色んなゲーム、または映画で使われるだろうという気がします。

本作においては、そんなアンチエイジングの技術テストだったのかなぁ……って側面も持っており、時雨の設定なんかはそのために追加されたんじゃないかと思います。

ムービー関連も映画のオマージュなどが盛り込まれていて完成度は高いです。なんか前後で内容が重複していたり、挿入タイミングが変なムービーがありますが、作ってしまったからには全部詰め込んでおきたいという気持ちは分からなくもない。

ゲームとしてどうかと思う人もいるでしょうが、つまらないゲームパートでお茶を濁されたり、無駄に時間を取られる位なら、映像作品としてコンパクトに纏めた方が良いだろうと私は考えます。

改めてキャプチャーを確認してみたんですが、思っていたより長くて驚きました。私のプレイ時間が30時間くらいだったので、軽く30%以上はムービーで構成されています。体感より短いということなので、ゲーム部分より感触が良かったってことなんでしょう(ストーリーは押さえるべき部分を外していて、ぱっとしないと言っても)。

サウンド

  • 有名どころを揃えた吹き替え
  • 数は多いボーカル曲
  • ただし印象に残らない

BGMやボーカルに関しては良好ですが、あまり印象に残りません。

まぁこの辺はゲーム部分が致命傷になっているだけで、曲などに原因があるわけではないです。BGMを改めて聞き直すと、ゲームを邪魔しない範囲で盛り上げていて、すこし地味だけど良い出来であることが分かります。

あとはよくある演出ですけども、やたらとバイクで走っているときにボーカル曲が流れ始めます。本作ではかなり多用していて、通算で7、8回はあった筈です。ゲームのつまらなさが連鎖してしまって、記憶には全く残ってないですけども……。

吹き替えに関しては、旧作の関係スタッフが勢揃いしています。ファンサービスの一環と捉えるべきが、作り手の趣味と捉えるべきか。

ゲーム性

  • 緩やかなオンライン要素
  • 冗長で作業感が強い
  • つまらないドライブシム
  • 発展性のない開発シム
  • スリルのないホラー
  • 退屈な戦闘

褒めるところがなさ過ぎるので、3点にするか悩みましたが、なろう系ゲームという部分をおまけして4点で。ゲーム性を重視するなら、まず3点でもおかしくないです。

本当にいるのか分からない誰かの「いいね!」に意味を感じられるかどうかが分岐点。

良く言えばカジュアル、悪く言えば浅すぎ

誰でも食べられるように煮詰めた「おかゆ」みたいなゲームなんですが、ソシャゲーを大規模にしたというのが、大局的な見方になると思います。ゲームにやり応えや、新しい体験を求めるヘビーゲーマーには全く不向きです。

ドライブシム、ホラー、シューター、開発系シムなどの要素をつまむ程度に配合していますが、そのどれもが微妙な出来映えなので、より洗練された特化型のゲームに比べると評価を与えにくいです。それらをプレイした経験があると、より退屈さが助長され、悪いところだけが目に付くようになります。

ピーキーさとは無縁なので、合う合わないという話では無く、良くも悪くもカジュアルという評価しか付かないと思います。大衆向けを狙い過ぎて外してる感が否めません。

配達という名の作業

一応、メインとなる筈の配達ですが、道中に遊びが見いだせないから、退屈であるという致命的な欠点を持ちます

移動を遊びにしたいのなら、法則性や解法が生まれるように経路を精査し、視点を誘導してプレイヤーに自然な形で答えを見つけさせ、移り変わる景色を見せて進捗を分からてと、割と必要になるプロセスが多かったりするんですが、本作はそれを疎かにしすぎました。

何かを運ぶゲームでも、普通ならできない道路交通法を違反してみたり、快適なドライビングと規模の拡大が約束されている運送だったり、悪路だけど再現性が高くて反復練習できるラリーだったりが普通に存在するので、創意工夫とオンリーワンの強みに欠けています。

道中に凝った仕掛けがあるわけでもなく、意味の無い水増し拠点も相当にあるので、オープンワールド系の悪いところだけを煮詰めたような状態になってしまった。こういうテーマをやりたいのなら、無理しないでプレイ体験をコントロールしやすいリニアなゲームにすれば良かったと思います。

レベルデザインとしても、アンロックされた車両等が後々機能しなくなるというのは問題。代わりのなにかがないから、振り出しに戻された気分になって、徒労感が増えるだけになっています。

BTと戦闘の淡泊さ

BTというモンスター要素は適材適所で使えば、退屈な配達を引き締めるスパイスになったのでしょうが、道中でドカドカ配置するから食傷気味になっています。

そもそもホラーと広域マップってのが相性最悪で、まともに演出できないから、移動を妨げるだけのお邪魔虫になってしまう。

エリア移動のロード時間を稼ぐための手法なんだろうと思いますが、ビークルの運用を阻害してくるので、減速効果が大きいです。追いかけっこにしたらまだ白熱しそうですが、リソース的に難しかったんでしょうかね。

さい帯を切れるようになったらいよいよ雑魚と化すので、素材確保のために最初は乱獲しますが、それも2、3回やれば有り余るようになるでしょう。

誰にでもできるように……という全体の方向性は守っていますが、人型の雑魚にしろ、大型のボスにしろ、適当にあしらっていれば終わるので発展性が無いです。

クリフとの戦闘なんか通算4回もありますが、やってることが最初からまったく変わってないですから、普遍的なシューターに比べて評価が伸びなくて当然です。

作り込み

  • バグが少ない
  • お手軽リスポーン
  • チュートリアルが長い、長すぎ
  • ショートムービー大杉
  • マップがスカスカ
  • サブクエストに魅力皆無
  • 総じて発展性がない

ユーザビリティの評価ですが、なんというか、色々困ります。

目立つバグもないし、コンテンツ自体はリッチだし、丁寧な作りと言えば丁寧な作りなんですが、その一方で誰も変だと思わなかったのかという広域マップのスカスカさや、冗長過ぎるチュートリアルや、半プレイアブルパートをどう評価すべきか迷います。

序盤の冗長さはかなり致命的で、その時点で脱落したプレイヤーが相当数いるでしょう。

開始から5時間くらいまでは移動するだけの作業とかマジで勘弁して欲しい。もうチャプター3の中盤辺りまで、ほぼカットで良いレベル。そこを越えても良作には分類されないですが、まだマシだとは思います。

お金や労力が色々と掛かっているのは分かりますが、全体的に無駄な部分が多すぎるので、まずは削る部分をバッサリ削るべきです。それだけで大分プレイアビリティが改善するでしょう。

無駄なショートムービー連打に関しても、没入間を高めるための繋ぎである筈がむしろ邪魔になっていて、毎回システムメニューを開くようになっているという本末転倒になっていて、どうしてこうなった……と思わなくもない。

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総括と後書き

普段ゲームをしているプレイヤーからすると、特に着目するような点も無いし、刺さるような要素も無いし、はっきり言って面白くない。私みたいにゲーム性を重視するタイプには完全に落第です。

徹頭徹尾してカジュアル向けであり、なんというか無垢な人じゃないと無理がでてきます。

アプローチの仕方が新興宗教とか、自己啓発セミナーのそれに通じると言えば分かりやすいでしょうか。ギャルゲーのキャラに入れ込み過ぎるタイプの人が知り合いに居るんですが、そういう感じの危うさみたいなものを感じずにはいられない。

包括して言えることですが、MGSとは決別したいのかなぁ……という印象があります。ちょっと無理があるだろう殺さずの誓いに走ってますし、客層に関しても女性受けを狙っているんじゃないかって部分が相当に見受けられます。

私が男なので推測するしかないのですが、家事や育児に疲れた主婦向け……かなぁ。

技術的なテストなどを盛り込んだ野心的な部分は評価できるものの、それでゲームが面白くなったり、ストーリーが良くなったりするわけでもない。ゲーム部分を全部カットして、ムービー作品にした方が受けただろうってのが正直なところですね。

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コメント

  1. アバター シド より:

    アンチエイジングの技術ならマーベル映画で頻繁に取り入れられています。

  2. アバター 匿名 より:

    メタスコアとかみてるとゲームを普段やらない人、小島作品信者向けという気が……

  3. アバター より:

    ゲーム性は序盤割と楽しみながら配達できたんだけど、雪山からちょっと中だるみした感じがした。歩いたり乗り物を使うには時間かかるし、ジップラインを繋ぐとその間行き来するだけになるし・・トロコン狙うと益々作業間が出てきつかったなぁ・・
    ストーリーはまぁ映画俳優皆好きだったから映画好きには楽しめるのでは(ムービー)。

  4. アバター 匿名 より:

    小島監督は映画監督になって映画作ればいいと思いました(コナミ
    ゲームなのにゲームの部分が一番つまんなくて足引っ張ってる気がする