クリア後の感想と評価: デトロイト -Detroit Became Human- (AVG 5.1点)

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  • ストーリー:4点 (+1)
  • グラフィック:7点
  • サウンド:7点
  • ゲーム性:3点
  • 作り込み:4点
10段階評価。6点以上でお勧め。
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ゲーム概要

物語は2038年のデトロイト。アンドロイドが闊歩する街を舞台としたSFアドベンチャーです。ゲームとしてはボタンを押す以外の操作が特にないです。選択肢が色々出てきますが、多くは無駄になっているので、概ね3Dアニメーション映画に近い内容です。

ストーリー

  • 刑事ミステリーとしては良好
  • 選択肢次第
  • 1世紀くらい時代遅れのSF
  • おかしな科学技術
  • おかしな社会体制
  • ほぼ絡まらない主人公たち

何を本筋として捉えるかで評価が大きく変わります。コナーを主体とするなら良、カーラ―なら凡、マーカスなら駄となります。これは世界観の設定、SFとしてのディティールに大きな問題があるからです。

リアリティを考えるとあり得ない描写が相当に多く、異世界だからなんでも許される位の気持ちじゃないと受け入れがたい側面は強いです。

また選択肢によってストーリーが変化するというのが曲者で、リプレイ性が悪い癖に、選択が減点要素になりやすいという悪い側面を持っています。ルート次第では+1点くらいしても良いかもしれません。

無茶な世界観

人間並みのAI搭載人型ロボが、前提となる研究を無視して突如として沸いてきて、電力や演算能力が社会に与える影響を考慮せず、またその科学技術を他へは一切流用しないというあまりにご都合主義に基づいた設定になっています。

実はクローンベースだったとか、そういう設定があれば理解できたものの、今更この設定で出されても違和感しかありません。コンピューター産業が発展する前の作品じゃないんだから、もうちょっと調整して欲しかったです(今更ブラウン管使ってるようなもの)。

まずSFとしては完全に破綻しており、リアリティというものはまるで存在しないということは考慮しておいてください。アンドロイドがいるのに自動運転が完璧じゃなかったり、動物型ロボットが研究途上だったり、データ保存しているのにアンドロイドを尋問し出したり、社会の描写は滅茶苦茶も良いところです。

細かいところを気にしたら負け

というわけで世界観が相当にガバガバの状態のデトロイトですが、これをメインテーマを描くためにあえて無茶をしたと好意的に捉えるにしても、マーカスとカーラ―のルート(特にマーカス)はかなり大味な展開になっています。

無理解な人類と、被差別者のアンドロイドというあまりに短絡的な構図に偏っていて、20世紀前半レベルまで道徳観念が後退しています。ヒューマンドラマとして捉えるなら、このような陳腐さは大きなマイナスでした。

物語というのは多かれ、少なかれ矛盾をはらむものなんですが、描きたい内容によって求められるリアリティは異なります。

本作のように社会問題を描くには、より精密な社会の描写が必要です。下手に難民問題、公民権運動とかに走らず、コナー主体の刑事もの、バディものにしておいた方が良かっただろうと。

コナー編が最も完成度が高い

コナー編のストーリーラインは最も完成度が高いですが、恐らくはライターの適性が高いか、最も得意とする領分なのでしょう。

堅物のアンドロイドと型破りの人間が組む刑事ものという手堅い内容で、SF設定や社会設定に矛盾があっても話として成立するジャンルです。事件周りで雑になっている部分もありますが、メインキャラクター2人の関係性が変化していく流れがちゃんと描かれています。

AIという設定を遵守するなら、リアリティのためにアンドロイドの数は徹底的に減らす必要がありますが、本体は会社にある超大型コンピューターにしておけば、話としてまともな形に落とし込めたかなぁ……というところ。

本編は構成に難があるので、雰囲気だけのキャラゲー止まりではあります。人造人間譚として、およそ押さえるべき部分もあんまり押さえていません。マーカス編に至っては大昔のB級SFの方がマシかもしれません。要するに謎のサメ映画とかと同じレベルです。

邪魔なパートが多すぎるものの、あんまりSF色を気にせず、刑事モノが好きな人向けの作品だと思います。

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グラフィック

  • リアリティを高めるフェイストラッキング技術
  • ガンアクションがスタイリッシュ
  • フレームレートが少し不安定
  • カメラワークがやや雑

ゲームの売上げはグラフィックに依存する面が大きいという側面を反映して、高水準のグラフィックを実現しています。ただしフレームレートが犠牲になっているので、キャラクターが多数表示されているシーンなどでは、目に見えてかくつきが発生しています。

とはいえ基本的にフレームレートが重要なゲームではないですし、キャラクターの表情、皮膚などは、ズームアップしているシーンにおいて突出したクオリティを出しています。マシンスペックのほぼ全てを、人間の顔にのみ注いだ結果でしょう。シワや毛穴も自然に感じられ、表情に少し堅さがあるものの、実写に極めて近しいです。

モーションに関しては切れ味が少々混在します。恐らくはモーショントラッキングした演者が異なるのでしょうが、優れたガンアクションに比べて、もみ合う格闘シーンなどが貧弱に映ります。

人物以外の表現も平均以上の水準で、自然にしろ街並みにしろ形になっています。ちなみに人並みのAIが出てくるのに、街並みが現代に毛が生えたレベル。2038年という時代設定ならば街並みはおかしくないですが、科学水準からみると中世の城がでてくるようなものか……。

サウンド

  • 優れたメインテーマ
  • 疾走感のあるスコアが多い
  • 無難な吹き替え

非常に良好なスコアが揃っています。サントラだけでも価値があるかも。惜しむらくはそれを使うべきシーンが貧弱すぎて生かし切れなかったこと。シナリオがもうちょっと固まっていたら相乗効果を見込めましたが、普通は無茶苦茶過ぎてしらけてると思います。

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ゲーム性

  • QTEの多用
  • 選択肢と思惑の乖離が激しい
  • 要らない操作が多すぎる
  • 要らないパートまである

所謂、選択制アドベンチャーなんですが、無駄な選択肢が多いです。また「選択肢とプレイヤーのやりたいことが乖離する」というこの手のゲーム特有の問題はまるまる残っています。

QTEに関しては、QTEでしかありません。ゲームとして評価すべき部分はなにもなく、時間の浪費に近いですね。それをゲームとして昇華できた作品もあるのですが、本作はそれに該当していません。数少ない良パートはコナーのチェイスシーンなどですが、それだけで取り返せるわけでもなく、全体としては非常に低調な仕上がりとなっています。

また日常生活の操作やら、ひたすら総当たりの調査といった、ゲームとしては駄目な要素が多すぎます。家事アンドロイドの生活を体験させたかったとかが理由でしょうが、そんなの一人暮らしだったら皆やってる。

作り込み

  • 目立つバグ無し
  • リプレイ性が極めて悪い
  • 雑過ぎるフローチャート
  • 操作の煩雑さ

リプレイ性は低いです。ひたすら面倒臭くて、ストーリーも大枠は変化しないので、コンプリートは前提としていないと考えるべきか。バグはないけど、もうちょっとユーザビリティを考えても良かったです。

下手しなくても日本のギャルゲーとかの方がこの辺はちゃんとしてます。

やっぱりゲームとしては辛い部分があるので、もうちょっとユーザービリティとかを考えて、ビジュアルノベルとしての完成度を高めてほしかったとも思います。

後書き

海外のメタスコアで脚本がクソって書かれることはそう多くないのですが、複数のメディアからはっきりと駄目出しされているのに納得できてしまう作品ではあります。挑戦は認めますが、ガッツリカットして刑事ものに纏めるか、マーカス編に大規模なてこ入れが必要だったと思います。

それなのにユーザースコアは異様に高いくらいで、やっぱりゲームの評価においてストーリー性はまるで重要じゃ無いんだなぁ……と改めて実感させられました。全体の完成度より、瞬間最大風速で評価する人の方が多いのかなとも思います。

いつまで経ってもゲームのストーリーが概ね低調なのは、まずは絵作りでそんなの後回しでも大丈夫という事実があるからなんでしょうね。ラノベの売上げが挿絵によって大きな影響を受けるのと同じっちゃ、同じなのか……。

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コメント

  1. アバター 匿名 より:

    クリア後に、イヤイヤイヤイヤちょっと待ってよ。アンドロイド視点だからめでたしめでたしだけどさ、実際に想像したら全部処分してアンドロイド製造中止にするべきだと思ったのは私だけではないと思います。

  2. アバター 匿名 より:

    やるドラシリーズのダブルキャストは楽しめたんだけどなぁと、ふと思い出しました。

  3. アバター 匿名 より:

    ムービーシーンのスキップがあれば全てのエンディングを見ようかとも思えましたが、このままの仕様だと流石にキツいですね。
    2周目以降は自分の選択が物語を変えているっていう感覚が無くなるので最終的に動画で見て満足しちゃいます。