ゲーム概要
ID:OOP15 (スライドプロジェクター)
オブジェクトクラス: safe
収容プロトコル:■■■
説明:特性のセットのスライドがこのプロジェクターで使用されると、投影された写真が異次元への入り口へと変貌します。オーディナリーの街で複数のスライドが使用され、街の住人達は17人を残して姿を消しました。
スライドは複数あったことが確認されていますが、完全なスライド1枚を残して焼かれています。局スタッフは完全なスライドを1枚と、焼け残った6枚のスライドを回収しています。
プロジェクターは専用のスライドが必要で、市販されている通常のスライドでは機能しないことが確認されています。焼け落ちたスライドでプロジェクターが機能するのかの実験が必要だと思われます。
発見:ディラン・フェイデン、ジェシー・フェイダンの姉弟がオーディナリー近辺のゴミ山で遊んでいたところ、捨てられていたスライドプロジェクターを発見しました。姉弟は「ハウス」のスライドを使いその先を遊び場としていたようです。やがてスライドプロジェクターの存在は街の子供達の知るところとなります。スライドプロジェクターは姉弟の手元から離れました。
街の子供達が「寺院」のスライドを使ったところ、その先には「母ならざる者(不確定存在)」がおり、母ならざる者はやってきた子供達にミルクを与えていたと、フェイデン姉弟は証言しています。子供達は姉弟が汚い猿と呼ぶ小さな化け物へと変貌し、その異常性は街の大人達の知るところとなりました。大人達は子供連行し外出禁止令が制定されますが、なにか良くないことが起こり、翌日には大人達の殆どが姿を消します。
事態に危機感を抱いたフェイデン姉弟はスライドプロジェクターを子供達から奪い取りました。プロジェクターの切り方が分からなかったため、セットされていたスライドを「手」へと切り替えたところ、姉弟は「ポラリス」と彼女たちが命名した存在と出会います。母ならざる者たちに追われていた姉弟が「ポラリス」の助言に従ってスライドプロジェクターを切ると、母ならざる者と汚い猿は姿を消しました。
異変に気がついた局のエージェントが現場に急行しますが、街の生存者のうち、フェイデン姉弟の姉ジェシーはエージェントに捕獲される前に逃亡しています。
ストーリー
- SCPのような世界
- ふんだんに用意されたテキスト
- 奇人変人の描写
- トリックがぎこちない
- 物語の緩急に掛ける
- ぱっとしないエンディング
SCP財団のゲーム化
ネット上の怪奇コミュニティ「SCP財団」の世界をデジタルに表現しようというアプローチのゲームです。
アメリカの政府機関「捜査局」は、過去から長きにわたってパワーオブジェクト、変貌アイテムを収集し、世界の秩序を守るために管理している組織。そんな情報局で発生した混乱を、主人公「ジェシー・フェイデン」の視点から描いた作品になっています。
弟を探すために局を訪れたら、上位存在ボードから局長へ認定されてしまった主人公。
捜査局が本部として使っているオールディストハウスと深い関係があるらしい上位存在「ボード」、主人公の頭の中のお友達「ポラリス」、オーディストハウスの侵入者「ヒス」と、人類以外の知的生命体を含めて独自の世界観を形成しています。
捜査局が集めた怪奇現象がゲーム中の仕掛けとして使われており、あちこちに落ちている内部文書も膨大で、読み物としての完成度は高いです。
関係者達もちょっとずれた人達が多くて、それが物語に関わってこないという点が問題であるものの、世界観の表現には一役買っています。
SCPライクな世界を造ろうという試みは、おおむね成功していると言えるでしょう。
大味なストーリー
世界観の形成には成功している反面、主人公たちの物語は及第点とは言いにくいものになっています。題材がオムニバス的なので、それを上手く取りまとめて、筋の通った話にするにはもうちょっと労力が必要でした。
重要になりそうなイベントが簡素に流され、ミスリードを誘うための仕掛けはぎこちなく、物語の結末も味気ない。ノンプレイアブルパートが増えても良いから、もうちょっと導入部分などを分厚くした方が深みが出たでしょう。
なんか予算の問題……という気がしないでもない。
エンディングもDLC展開のためかお座なり。主人公が管理局のボスとしての自覚を持つという節目はあれど、主人公の持つ命題と着地点には明らかなずれがあります。ジャンプ漫画の打ち切りみたいな印象になる原因です。
そもそも怪奇に満ちた世界観を作ることが第一で、魅せるシナリオ作りは考えてなかったという雰囲気すらあるわけですが……活劇としての面白さは何歩か足りていません。
グラフィック
- 変貌する世界の構築
- メインキャラクターのリアルさ
- 海外ドラマみたいな演出
- 実写ムービーが割と多い
- 単調なビジュアル
全体的に手堅い作りになっています。怪異によって歪められた世界を描いており、工夫を凝らした変貌演出も見られます。
舞台となるのは管理局の本部であるパワーオブジェクト「オールディストハウス」の内部ですが、それ故に代わり映えのしないコンクリート壁が目立つ。それに超常現象や、怪異を調査するための実験設備がアクセントとして加えられている形です。
キャラクターデザインはフォトリアル系の流行として、実際の人物を取り込むキャプチャー系です。各棟スタッフなどのサブキャクターは少々甘いですが、主人公としたメインキャクターはゲームの世界に良く馴染んでいます。
サブクエストで待ち構えてる大型ボスのクリーチャーデザインは意外に凝っていますが、ヒス以外となると少数なのが惜しいところ。
あとどうでも良いけど気になった点としては、クリア後の主人公がオフィススタイルになるんですが、あまりにも似合ってない……。
サウンド
- 適当なボイスアクト、サウンドエフェクト
- 地味すぎるスコア
とくに言及するようなことがない地味さです。
ゲーム性
- 超能力による戦闘
- 平凡なTPS
- 戦闘の発展性に欠ける
- 成長要素が弱い
- 捻りのない探索と謎解き
念動、瞬間移動、飛行などを駆使して、管理局のコントロールから外れた怪異と闘うTPSになっています。
武器はハンドガン、ショットガン、サブマシンガン、スナイパー、ランチャーと一通り揃っているんですが、なにぶん敵のバリエーションが乏しいので、武器を使い分けるような機会に乏しいです。
シューターとしては目新しい要素も無く、ごくごく平凡としか言いようがないです。
目玉要素である超能力ですが、こっちも戦闘に幅を持たせるには少々問題があります。
一つは物体を飛ばす「発射」があまりにも強すぎて他の選択肢を取りにくいこと。速射性こそありませんが威力が高く、敵を怯ませる効果、アーマーを破壊する効果を持つため、終始それを連打する展開になりがちです。
また超能力によるステージ突破系の仕掛けも捻りがなく、怪異の設定を生かし切れているとは思えません。自由度こそ高いものの、それ故に大味さが先行してしまって、短いゲームの中ですら飽和気味になります。
何かしらの制約が付いている能力にして、パワーオブジェクトの存在を活かしたゲーム作りをした方が良かったかなぁ……と思います。
作り込み
- 目立つバグ無し
- 怪異が側にある世界
- 地味にサブコンテンツが多い
- 仕掛け不足で飽きる
- ナビゲートが分かりにくい
- DLC待ち
初版は武器をアップグレードできないとかありましたが、それ以外には目立ったバグも無いですし、リソース不足を感じる部分もありつつも、手堅いゲーム作りになっています。
ゲーム部分に落とし込むのに少々失敗しているとはいえ、世界観の構築は良く出来ていて、SCPなどが好きな人なら、ケテル的なインパクト不足はあっても、それなりに満足できる出来映えだとは思います。
サブクエストなどもそれなりの質は保っており、メインよりボスっぽいヒスとは異なる怪異たちが待ち受けています。
ゲームの導入に関しては丁寧であるものの、レベルデザインは最初が山場になっています(その後、調整された模様)。後になるほど超能力によるごり押しが効くので楽になっていきます。物語の掴みが弱いこともあって、少々不親切かなと思う部分も。
あと章ごとに新しいブロックに移動するんですが、目標地点が分からないのでちょっと迷います。
総括と後書き
ゲームとしては平凡ですが、世界観の作り込みは評価できるゲームです。
なんか全体的にリソースや予算が足りてない雰囲気があるので、それがあればもっと完成度の高い内容になったのでしょうか。この辺りDLCの出来などにも左右されそうですが、ちゃんとゲームを拡張する内容であればもう少し評価が伸びそう。
バックボーンはしっかりしているので、ゲーム部分がもっと超能力を活用する内容になっていれば良い作品になったでしょう。
とはいえ不作だった2019年のゲームの中では良作側に属すると思います。IGNのGOTYを取っていますが、私個人としてはこれとSekiroと、DMC5の3択なので、カジュアルさ考慮して年間トップに選ぶかも。
日本語訳が少々荒ぶっているらしいですが、RPG的にライトに楽しむ分には良い作品だと思います。
2019年はヒーローがいない年でしたね。
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