Little Nightmares: 解釈と考察 -MOWに住まう人々-

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本稿はLittle Nightmaresを個人的に解釈し、考察したものです。DLC3までのネタバレを諸に含む可能性がありますし、ライターの意図とは異なるかもしれません。あくまで解釈の一つに過ぎないので、その点だけは留意してください。

シックス

シックスはリトルナイトメアズに登場する黄色い雨合羽を着た少女です。本編における主人公であり、絶えずお腹をすかせている弱々しい存在。彼女の持つ”飢え”は、始めこそささやかなものでしたが、やがて多くのものに牙を剥きました。小さきもの、弱者でありありながら、MOWに大きな禍をもたらした人物でもあります。

“飢え”に突き動かされるままにノームを食い殺し、レディを食い殺し、果てはゲスト達を数多殺傷するという暴走ぶりを見せました。

レディを捕食するシックス。子供や老人が真っ先に犠牲になるという伝染病の側面を表しているのだと思われます。

シックスの正体を説明するに簡単なのは名前です。彼女の名前は”Six(数字の6)”ですが、同時に”Sics(病気)”でもあります。どっちも読み方が同じという、英語の駄洒落みたいなものですが、彼女の持つ二面性を表現するために意図的に付けられた名称だと考えられます。2人を1人の人物として誤認させる叙述トリックがありますが、本作のシックスもそれと同様のパターンにあって、異なる二つの存在が、まるで一人のように描写されています。

主人公のシックスは、かたや致死性の高い病原体に感染した孤児の少女ですが、それと当時にその病原体を擬人化した存在でもあります。

本作は20世紀初頭の世界における孤児達の話を、MOWという場所に置き換えて描いたメタファーの物語です。信用できない語り手という概念がありますが、十分に成熟していない幼子もそれに該当します。本作は子供の悪夢というテーマに基づき、少女シックスの著しく歪んだ世界を描いているのです。

劇中の情報から推察するシックスの生い立ちは、保護者の自殺から孤児になってしまった少女です。孤児院に収監された彼女ですが、その生活は我慢できるものではなかったようで、監視の目をかいくぐって外へと逃げ出します。しかしそこで待ち受けていたのは、今までと変わらない”飢え”との戦いでした。ネズミ取りに掛かったネズミを食べるまでして飢えを凌ぎますが、それこそが彼女を病原体のキャリアにしてしまいました。

空腹に耐えかねた彼女の目の前には、罠に掛かったネズミの姿が……。

それ以降の彼女は、空腹に突き動かされるに際し、咳き込むような仕草を見せるなど、病原体との関連性が色濃く表れるようになります。そして彼女が逃げ回っているキッチンのコック達もまた咳き込んでいることから、病原体には伝染性が見て取れます。

シックスが咳き込むタイミングは、”飢え”に襲われるときです。人間である少女シックスが実際にお腹をすかせているのは勿論、彼女を媒介としている病原体も”飢え”ているのです。病原体の”飢え”とは、増殖しようとする活動、新しい宿主を欲することです。それの表現としてノームを捕食する、レディを捕食するというシーンが描かれたのでしょう。シックスの中で生きていた病原体が、第三者に感染して、その相手を殺傷してしまった訳です。

最後のシーンに関しても、彼女が連れてきて、また彼女の中で突然変異した伝染病が、ゲスト達を次々と殺傷したパンデミックであると解釈できます。リトルナイトメア-ズ-(英語だと複数形)というタイトルが持つもう一つの意味もここで回収されます。すなわち人々を死に至らしめる小さな悪魔……。

次々とゲスト達を殺める本編のラストシーン。シックスを媒介として広まった病原体によって多くの人々が死に至った。

ラナウェイ・キッド

キッドはDLC3作品に登場するもう一人の主人公で、同じくMOWに捕らわれた孤児です。劇中の表現からは、水難事故で両親を失い孤児院に収監されたようですが、生活の質が悪いことに耐えかねて、シックスと同じく脱走しました。

その後の彼は色んな場所を転々としていたようですが、変態おばさんを感電死させたり――なにがあったんだろう(すっとぼけ)、ノーム達が働く炭鉱に流れ着いて、そのリーダーに収まったりと、高い行動力とリーダーシップを持っていたことが窺われます。

ノームは大人達に捕まって、労働力と見なされた子供達です。20世紀初頭にはこういう子供が大勢いて、奴隷のような労働を強いられていました。

ノーム達が暖を取っているシーンで、その影が子供の姿になっていることから、それが読み取れます。

この辺りの歴史的事情は有名な写真家がいるのでリンクを乗せておきます。20世紀前半における過酷な児童労働者の姿を捉えています。

Atget Photography アジェ・フォトは、ルイス・ハイン Lewis W. Hine 作品とプロフィール・写真集・名言集・動画 YouTubeを見やすく丁寧にわかりやすく紹介するサイトです。

すっかり孤児、浮浪者としての生活が板に付いてきた彼が辿り着いたのが、レディの経営する店。そこでレディの持つコンプレックス、秘密を知ってしまったが故にノームに変えられてしまいます。ノームに変えられるということが何を挿すのか、あまり想像したくない話ではありますね。

そしてノームとなった彼を待ち受けていたのは、シックス(伝染病)でした。DLC3作目で明らかになったことは、シックスに捕食されたノーム、伝染病による最初の犠牲となった子供こそ、彼であったということです。レディの正体が老婆であったこともあわせて、伝染病の犠牲が免疫が弱い子供、老人から始まるという側面を表すことになっています。

DLC3でのラストシーン。どこかで見たようなソーセージに歩み寄るキッドが描かれます。

怪人たち

レディ

レディは高級料理店、子供達を酷使する鉱山等を経営する資本家の女性で、厚塗りの化粧によって自身の歳を偽っています。自身の美貌に自身を持ち、それに執着していた彼女は、素顔を見てしまったキッドを捉えて、ノームに変えてしまいます。それが実際にどういうことを意味するのか……考えたくもない話です。

老人は病気に対しても弱いため、子供であるキッドに次いでシックス(伝染病)によって命を奪われたのではないか、という推測が立ちます。

レディの素顔はDLC3で見ることができます

シェフ

シックスが盗み食いを繰り返していた厨房のシェフです。浮浪者となっていたシックスを追い回すうちに伝染病をうつされ、のちのパンデミックを発生させる原因となってしまいました。シックスと同じような咳をする姿が見受けられます。

咳き込む双子のシェフ。これがラストの遠因になりました。

ゲスト

レディの高級料理店に訪れる財産を持つ大人達です。シックスが飢えて苦労しているのに、彼らは丸々太っています。また子供であるシックスに比べれば大食漢であり、シックス自身も食べようとするのではないか、という勘違いをさせました。ラストシーンは彼らが病に倒れ、次々と死んでいくという刺激的な表現になっています。