《団結のドミナリア》に端を発する2023年度のスタンダード環境の変遷です。
紙スタンダードの衰退が公式からも言及されたシーズンで、シーズンの後半において、次シーズンにおけるローテンションの変更も告知されました。
またシーズン中に2回の禁止改定があり、合計4枚の禁止カードを輩出しています。
デッキタイプとしてはミッドレンジがかなり多く、黒の隆盛が著しい状態でシーズンを通しました。
目次
主なデッキ
太字のものは中長期に渡ってTier1になったことがあるデッキです。
アグロ
コントロールに比べればパーツに恵まれているものの、相性が悪いミッドレンジが多いので、殆どのデッキが短命に終わっています。特にBO3環境では顕著です。
- 白単兵士()
- 赤単アグロ()
- アゾリウス兵士()
- セレズニア毒性アグロ()
- セレズニアエンチャント()
ミッドレンジ
トーナメントレベルだと8割以上はここに属しているとおもいます。特に優秀なカードが多くて層の厚い黒に、飛び抜けて強い《鏡割りの寓話》を加えたラクドスベースのミッドレンジは長期にわたって環境を支配しました。
- 黒単ミッドレンジ()
- 青単ジン()
- ディミーアミッドレンジ()
- ラクドスミッドレンジ()
- ラクドスサクリファイス()
- ラクドスブリーチ()
- エスパーミッドレンジ()
- エスパーレジェンズ()
- グリクシスミッドレンジ()
- ジャンドミッドレンジ()
- スルタイローム()
コントロール
本来ならばミッドレンジを抑圧する役目を持つのですが、パーツ不足で抑えきれずにミッドレンジ1強の環境を決定付けました。
ミッドレンジが容易にアドバンテージを稼げるうえに、コントロールに適したフィニッシャー不足なのが致命的です。《鏡割りの寓話》などが禁止されるに至って、ようやく数を増やしましたが、それでもミッドレンジ環境に終わっています。
- 白単コントロール()
- 版図コントロール()
- ボロスリアニメイト()
- アゾリウスコントロール()
- ジェスカイコントロール()
- エスパーコントロール()
団結のドミナリアの時代
「団結のドミナリア(DMU)」が発売され、「ゼンディカーの夜明け(ZNR)」~「フォーゴトン・レルム探訪(AFR)」のカードがローテンション落ちしました。
前環境の中核となっていた「ジェスカイ日向」は、メインカードであった《マグマ・オパス》を失って消滅しており、前環境から残っている《策謀の予見者、ラフィーン》を採用したエスパーミッドレンジが最大派閥となります。
ローテンションで失ったミシュラランドの代替となる《しつこい負け犬》があり、DMUでは《黙示録、シェオルドレッド》というパワーカードが加わります。
リリース直後こそ、リアニメイトなどのコンボ要素を含んだデッキなどがありましたが、安定性の面でマイナスであり、やがて安定性を重視した純粋ミッドレンジに収束していきました。
今後、長らく続くことになる黒系ミッドレンジ中心の環境が始まりました。
エスパーミッドレンジ(前期)
《策謀の予見者、ラフィーン》を中核としたデッキで、DMUのリリース直後には最大勢力を誇りました。後に伝説クリーチャーを増やした「エスパーレジェンズ」へと派生し、そちらが主体へと変わっていきました。
このデッキにも採用されているのですが、《黙示録、シオルドレッド》の影響が大きいデッキです。敵に《黙示録、シオルドレッド》を出されると機能不全になるので、それが幅を利かせるようになると徐々に衰退していきました。
グリクシスミッドレンジ(前期)
グリクシスミッドレンジはこの後も長らく残ることになりますが、この当時のグリクシスミッドレンジは吸血鬼のシナジーによって、カードアドバンテージを稼ぐ構成でした。
フィニッシャー枠として《欲深き者、エヴリン》を採用しているのが特徴です。
後に《穢れたもの、ソルカナー》になったり、《刃とぐろの蛇》になったりしましたが、カードプールが広がってマナ基盤が強化されると、《絶望招来》をフィニッシャーにしたタイプへと変わっていきました。
禁止「食肉鉤虐殺事件」
DMUのリリースから約1ヶ月を経て《食肉鉤虐殺事件》がスタンダードで禁止されました。明らかな黒の隆盛を受けたものです。
とはいえ、この当時の環境とにおいて《食肉鉤虐殺事件》が強すぎたかと言われと疑問であり、ミッドレンジミラーを見越して、すでに採用枚数が減らされている状態でした。上記のリストでもメインとサイドを合わせて2枚程度なのはこのためです。
黒系のデッキは別段衰えることはありませんでしたが、黒系の低速コントロールや、サクリファイス系のデッキは環境から消えることになります。
兄弟戦争がリリース
MTGの黎明期から登場している曰く付きの兄弟ウルザとミシュラに焦点を当てたアーティファクトセットが「兄弟戦争(BRO)」です。
題材が題材だけにアーティファクトが押されたセットでしたが、それ故に警戒されたのか、全体的にカードパワーが低めです。
とはいえ《軍備放棄》《喉首狙い》《僧院の速僧》など、細々としたパーツは入手し、友好色ペインランドを得たことによって、マナ基盤がかなり完成されました。
《鏡割りの寓話》によって安定性が担保されているラクドス系のミッドレンジは、クアドロプルシンボルの《絶望招来》をフィニッシャーに採用するようになり、「黒単ミッドレンジ」の勢力を大きく削りました。
これに伴い前環境でトップだった「エスパーミッドレンジ」に代わり、「グリクシスミッドレンジ」が環境の中心になります。
またアーティファクト関連のシステムが不発だったのですが、白青でフィーチャーされた兵士の部族デッキがこの頃に登場し、長らくTier2位の立ち位置として環境に残りました。
アゾリウス兵士アグロ
後にカウンターを増やしたタイプや、《イーオスの遍歴の騎士》を搭載したタイプなどが生まれますが、その原型がこの当時に登場しています。
ファイレクシア 完全なる統一がリリース
「ファイレクシア 完全なる統一(ONE)」は、各種カウンター、増殖をメインとしたエキスパンションです。
復活した毒性カウンターによるアグロ戦略はリミテッド環境において多大な影響を持ち、やがてスタンダードにおいてもそれを利用したデッキが登場します。
とはいえ、環境の中心となっていたミッドレンジに対してはそもそも不利なアーキタイプであったこと、軽量な除去には脆かったことから、その勢力は短期的なものになりました。
長期的な影響があったのは、歴代でも屈指のパワーカード《偉大なる統一者、アトラクサ》の方で、リアニメイトの釣り先として、下環境まで含めて様々なデッキに採用されます。
スタンダードにおいても、白系ミッドレンジ、黒系ミッドレンジにリアニメイトを搭載したタイプが再び登場、一時期は右も左もアトラクサという状況になりました。
これらのデッキは《偉大なる統一者、アトラクサ》さえ出せれば勝てるのですが、釣る側のカードが5マナと重いのが欠点でした。友好色のファストランドを得たラクドス系のミッドレンジの《絶望招来》が安定していることもあって、依然として純粋ミッドレンジの形が主流でした。
ちょうど「団結のドミナリア(DMU)」リリース後と同じようなメタ変遷を辿った形ですが、《偉大なる統一者、アトラクサ》が強いこともあって、そのときよりも根強い流行になっています。
エスパーレジェンズ
《鏡割りの寓話》が無いことで《絶望招来》を撃ちにくかったエスパーミッドレンジが変形したデッキです。
非クリーチャー呪文の採用を減らして《スレイベンの守護者、サリア》を活用します。《離反ダニ、スクレルブ》を得たことによって、「グリクシスミッドレンジ」の対抗馬となりました。
《黙示録、シェオルドレッド》に弱いこと、後手番に弱いことから徐々に衰退していきました。
機械兵団の進軍がリリース
新生ファイレクシアとの決着となった記念エキスパンションであり、ファイレクシア勢力の即落ち2コマっぷりで、多少なりとも背景ストーリーを追っていた数多のプレイヤーが、
――と拍子抜け……のような感情を抱くことになりました。今までの苦戦はなんだったのだろうか。
新カードとして、重たいけど強力なカードが多数登場しました。
新カードタイプ「バトル」が登場し、ラクドスベースで模索が始まります。当初は様々なコンボ系のデッキが登場し、強化パーツを得たラクドス系が更に勢力を伸ばしました。
元から利用していた《鏡割りの寓話》と《税血の徴収者》のパッケージに加えて、《希望の導、チャンドラ》と《絶望招来》の爆発力が加わり、青を外したラクドスへの回帰が見られます。当初3色環境だった2023年度のスタンダード環境ですが、カードプールの拡大に伴って色が減らされる流れとなりました。
またその逆のパターンとして《ゼンディカーの侵攻》を獲得して、《偉大なる統一者、アトラクサ》を素出ししやすくなった「版図コントロール」もメタ上に再浮上します。
ラクドスミッドレンジ(後期)
元々は「グリクシスミッドレンジ」だった形から、安定性を求めて青を外したデッキ。「グリクシスミッドレンジ」を排して、環境のトップになりました。
マナ加速を加えて《多次元宇宙の突破》を加えた「ラクドスブリーチ」も存在します。《偉大なる統一者、アトラクサ》を搭載したデッキに対して強いのが特徴です。
版図コントロール
不安定なリアニメイトを捨て、《偉大なる統一者、アトラクサ》の素だしを狙ったデッキ。ミッドレンジに有利で、禁止改定後には流行するものの、コントロールの増加によって衰退。
禁止「鏡割りの寓話」の後に
下環境でも使われるパワーカード《鏡割りの寓話》が遂に禁止されました。1枚でマナ加速、手札入れ替え、フィニッシャーを兼ねるという凄い奴。
スタンダード環境においては長らくラクドス系を支える原動力になっていましたが、環境末期になって遂に退場となりました。除去してもアドバンテージを失うし、使用率が高すぎました。
また黒系ミッドレンジのフィニッシャーだった《絶望招来》、ミッドレンジミラーのために大量に搭載されるようになった《勢団の銀行破り》も同時に禁止されます。
これに伴い最有力になったのは「版図コントロール」、「エスパーレジェンズ」、「セレズニアエンチャント」です。特に「セレズニアエンチャント」は大きな勢力になりますが、「版図コントロール」などに押されて消えていきました。
また「版図コントロール」自身も一時は流行しましたが、コントロールデッキの数が増えたことから数を減らしていきました。ハンデスや打ち消しに弱すぎたのです。
最終的に最大派閥となったは「ディミーアミッドレンジ」です。《鏡割りの寓話》を失って単色になった「黒単ミッドレンジ」に、青のカウンターを加えて、対コントロール性能を高めたデッキです。
対抗馬に白が浮上したことがあったものの、年間通して黒に染まる1年でした。
ローテンション3年計画のため、次回のローテンションはスキップされたので、場合によっては後1年黒系ミッドレンジの時代が続く可能性もありそうです。
ディミーアミッドレンジ
「黒単ミッドレンジ」にカウンターを加えたデッキ。爆発力に欠けるものの、安定して強いのでメタ上位に浮上。
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