マリオ ワンダー: ワンダーとレベルデザインの妙技(コラム)

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マリオワンダーは2023年11月21日に発売された10年ぶりの2Dマリオ作品です。

本項はそのマリオワンダーをクリア後に感じた感想と、そのレベルデザインの優れた点、昨今のゲームにおけるレベルデザインの難しさなどの考察になります。

マリオワンダーは端的言って今後出るだろう2Dプラットフォーマーの試金石になりそうな作品ですが、他のメーカーだと真似するのが難しそうな部分も多いです。

正直、これ位の作品をコンスタントに出してくれれば、サードメーカーも評判が上がって、販売数が上がる→開発にコストを掛けられるの好循環に持ち込めるのでしょうが……。

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プレイヤー層の広域化

ゲーム市場の拡大に伴って、プレイヤー層のニーズも多様化し、またプレイスキル、プレイ時間にも隔たりが生まれるようになりました。

当初のゲームというのはマニア向けで、一部の好き者がプレイするものでした。

現在でもそういうニーズはあるのですが、ゲーム開発費の高騰に伴って、そういうニッチなゲームは淘汰される流れになりつつあります。

なので昨今のゲーム開発においては広いプレイヤーに遊んで貰おうと苦心しており、窓口を広くするために他社コラボをしたり、インフルエンサーを起用したりしています。

またレベルデザインにおいても昨今は簡易化の流れにあります。これはシングルプレイのゲームだけではなく、マルチプレイのゲームにおいてもそうです。多くの場合において、複雑なゲームというのは過疎化する傾向にあり、集客という点でマイナスになりやすいです。

だからといって、レベルデザインを簡単にすれば解決とはならない点が、開発側を苦しめることになっています。

簡易化の問題点

最初のプレイヤーはゲーマーである

新作ゲームをいざ発売となったとき、真っ先に手を伸ばすのは、普段からゲームをプレイする人の割合が多いです。

特にシリーズものになると、前作をプレイしていて、且つ次作も買ってもよいと思った人になりますし、ある種のネームバリューで売っているゲームだと、ファンや信者と言われる層が形成されます。

そこで問題になってくるのが、安直な簡易化は上記のようなプレイヤーに受けないという点です。

ゲームが発売した直後のレビュー、初報というのは、熱心なプレイヤーが生み出すものなので、そこで躓いてしまうと、後発プレイヤーの購買意欲に影響します。最も注目が集まっているタイミングで失敗すると、後から巻き返すのは困難になることも多いです。

行き過ぎた簡易化の末路

レベルデザインの簡易化はカジュアルプレイヤーの離脱を防ぎますが、そもそも良いゲーム体験を提供できなれば関心を得ることができません。

簡単にするだけでは、ゲームが炭酸が抜けたコーラ、薄めたコーヒーのようになり、刺激もなにもあったものではありません。時間が無駄に掛かるだけで、成功体験も感じられなくなります。

簡易化とはゲームパートが不要になっていく前段階とも言えます。

ボタン連打で終わるのなら、そもそも連打しなくて済むようにしろとなるわけで、レベルデザインに大きな問題を発生させます。

達成感を与えるために、無駄に時間を掛けさせたりするのも、娯楽で溢れかえる昨今においては相応しくありません。もはや1本のプレイ時間を誇るような時代ではなくなったのです。

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マリオワンダーに見えるレベルデザイン

マリオワンダーにおけるレベルデザインは絶妙で、カジュアル重視で易しいのを基本としつつも、ワンダーの効果で飽きにくい作りになっています。

ワンダーの多様性

《ワンダーフラワー》をキメると、様々な特殊演出が発生し、コースが動的に変化します。多くの場合は強制スクロールになるのですが、それに際して自機の性能が変化したり、環境演出が異なることで、初見時の驚きを提供してくれます。

次々と新しいワンダーに遭遇することで、ゲーム進行にまつわるマンネリさを回避しているのですが、これはアイデアの贅沢過ぎる使い方です。

ゲームにおける物量というと、オープンワールドとか、AAAゲームのリッチなグラフィックを想像しますが、それとは異なるベクトルでの物量勝負を仕掛けてきたゲームです。アイデアを捻りだし、選出するだけでも、かなりの時間と予算が掛かっていそうです。

ワンダーによるクリア条件2

クリアするだけなら簡単だけど、《ワンダーシード》を取ろうとすると難易度が上昇するコースが多いです。

カメックが生み出す戦艦系のマップが分かりやすいと思います。コースは変化しないけれど、自機を狙ってくる砲弾が追加されるので、ゴール目的なら《ワンダーフラワー》を取らない方が近道です。ワンダーの存在が各コースのクリア条件2になっており、簡単なクリアと、難しいクリアの2段階を生み出しました。

本編のボスであるクッパを倒すだけなら、《ワンダーシード》を過剰に集める必要もありません。ゲーム開始時に選択しているわけでも、文字として表示されているわけでもありませんが、プレイヤー側の自由選択によって難易度が変化する仕掛けでした。

最終的には歴代上位に入るだろう高難易度コースにも挑戦でき、ファミリー向けの大衆作品としては、窓口の広い、優れた作風の一助となっています。

不完全燃焼さもある

マリオワンダーは多くのアイデアを詰め込んだびっくり箱みたいなゲームなのですが、それ故にアイデアを使い捨てにしているという勿体無さ――みたいなものを感じてしまいます。

特にバッジの仕組みがそうであり、アクションを拡張する仕組みでありつつも、それを積極的に利用する機会がありません。もうちょっと、しつこく擦ってみても良かったかなぁ……と感じます。マリオの変身もそうで、ゾウ、アワなんかは、まだまだ使い道がありそうな感じでした。

土台としてのアクションは充実しているのですが、どうやって遊ぶかはプレイヤーに任されており、どうも肩透かしに終わった感が残ります。その辺りは、特化型のインディーゲームなんかで補填するしかないのかもしれません……。

ぶっちゃけた話として、これをベースとしたマリオメイカー3が出れば――と思う部分はありつつも、それだと新鮮な体験という部分は再現されないし、どこかでDLCなどがリリースされないかと期待しつつ、本項の締めとしたいと思います。

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