前々から何かしらの変更をすると告知されており、界隈では色々と話題になっていましたが、遂にMTGにおけるスタンダードの禁止カードが発表されました。
今年からローテーションが変更されて、本来だとローテーション落ちする予定だったネオ神河までのカードが急遽残留することになったので、その中からヴォルデモートが選ばれるという予想が主流でした。
そして、発表されたのは《鏡割りの寓話》《勢団の銀行破り》《絶望招来》。全部ネオ神河出身です。
《絶望招来》はやり過ぎ感があるものの、最近の禁止カードをポンポン生み出す動向を見ていると、まぁまぁ順当なところだと思います。
鏡割りの寓話
《鏡割りの寓話》は旧神河ブロックに存在していたレアカード《鏡割りのキキジキ》を元にした英雄譚です。
原型になる《鏡割りのキキジキ》は、ランプデッキのフィニッシャー、無限コンボの片割れとして活躍しました。鏡の持ち主である《曇り鏡のメロク》ほどでは無かったと思いますが、旧神河ではかなり人気のあった1枚です。
キキジキについては明確な背景ストーリーが存在しており、悪戯好きだったゴブリンの1匹が龍から宝珠を盗んで来るように言われます。《曇り鏡のメロク》の持つ宝珠をこっそり盗み出すことに成功したキキジキでしたが、その際に見つけた魔法の鏡を破壊したことによって、その鏡が持っていた分身を生み出す能力を得ました。
これを英雄譚にするに際して、デザイン的な拘りも見え隠れしており、鏡見写しを再現するための工夫が随所に見られます。最終的にクリーチャー2体出てきますし、カード2枚交換という対照形に拘った数字を採用しています。
これ、過去に禁止措置を受けた《創造の座、オムナス》、《約束された終焉、エムラクール》と似通ったパターンです。
《創造の座、オムナス》は段々と色が増えていく過程の4番目、《約束された終焉、エムラクール》は不吉を表す13という数字を使わざるをえない中で、カードデザインをこねくり回していくうちに最終稿として通ってしまったという逸話が残っています。
今回の《鏡割りの寓話》もそんな感じで調整をすり抜けてしまったんじゃないか……という香りがプンプンしています。
それこそ《鏡割りの寓話》のマナコストがRR2とかなら、デザイン的にもパワー的にも無難になったでしょうが、地味過ぎてエキサイティングじゃないというエルドレイン的な圧力が掛かってしまったのでしょうか。
即効性が無いから、マナコストを攻めた数字にしてみたら、当初の予定を外れて大暴れしてしまった――みたいな流れが推察されます。
《鏡割りの寓話》は出ただけでアドバンテージを確定させて、デッキの潤滑油になる凶悪なカードなんですが、エルドレイン産の《砕骨の巨人》や《厚かましい借り手》と共存している状態なら、そこまでヘイトを集めなかったと思います。
頭エルドレインから脱却がようやく終わった時代に、なんかエルドレインレベルのカードが混じってしまったというのが不幸でした。カードパワーが突出しているため、禁止するならこれしかないやろ的な印象を多くのプレイヤーが抱いていたと思います。
当たりカードが多くて、カードパワーも高水準で纏まっていたネオ神河は近年の中ではトップクラスの良セットだったと思いますが、ちょっと調整をすり抜けちゃうと大変なことになるということですね。開発側も大変だ。
勢団の銀行破り
カードパワー自体はそこまで高くないものの、実際にミッドレンジミラーや、対コントロールとしては、かなり強力なカードです。
対アグロになるとサイドアウトすることになるものの、ミッドレンジ環境故にメインの採用が段々と増えていった経緯を持ちます。遂には露骨にカードパワーが高い《鏡割りの寓話》よりも採用率が高くなる事態になりました。
このカードがリリースされた当時に禁止になると思っていた人はおるまい……。
とはいえ、現在のミッドレンジミラーにおいて、これを何枚引くかで勝負が決まる運ゲー感も否めないわけで、私は小学生の頃からMTGをやってる古い人なので、ホイホイ禁止を出してくる昨今のMTGには違和感ありますが、現在のゆるゆる禁止基準を考えると、当然なのかな……とも思います。
《勢団の銀行破り》によってミッドレンジのカード獲得手段が制限されるので、コントロールデッキにとっては追い風です。特に《勢団の銀行破り》に滅法弱いため、メインで採用されなくなっていた再録カード《ベールのリリアナ》も、これを機会に再び日の目を浴びることになりました。
絶望招来
《絶望招来》はBBBB1の5マナソーサリーで、布告系除去を束ねたような1枚です。クリーチャー、エンチャント、プレインズウォーカーをそれぞれ除去することができ、マナコスト相応のパワーがあります。
とはいえ《鏡割りの寓話》、《勢団の銀行破り》に比べると、カードパワー的には見劣りします。特に《鏡割りの寓話》と同列に扱える存在かと言われると……。
環境的にも《鏡割りの寓話》が無くなった後でも使われるかは怪しい部分があって、躍進するだろう白系との相性を考えると、流石にメイン4枚は採用しない気はします。赤黒のデッキが残留するにしても、リアニメイトのパッケージ等に比率が移るんじゃないかと思います。
古い型のエスパー(白青黒)も当初から《絶望招来》を使っていません。《鏡割りの寓話》が無いから、クアドロプルシンボルが払えないためです。
ローテーション前の環境ではオルゾフコントロールが末期に隆盛しましたが、《蜘蛛の女王、ロルス》や《雪上の血痕》が優先されていたので、《絶望招来》を採用していたプレイヤーは殆どいなかったと思います。
つまりは《絶望招来》はその程度のカードなわけで、私が迂闊な禁止を嫌う古いタイプのプレイヤーなのでそう思うのでしょうが、何やら懲罰的な意味合いが強そうな措置に見えます。
前の禁止改定で《食肉鉤虐殺事件》が禁止されましたが、黒系のミッドレンジ中心の環境がずっと継続しましたし、その2の舞になることを避けたかったのでしょうか。《鏡割りの寓話》を禁止してもラクドス環境だったときのそしりを危惧したのかな……という印象が強いです。
おまけ:熊野と渇苛斬の対峙
スタンダードの禁止改定が発表された同時にアルケミーにおいてナーフが告知されて、《熊野と渇苛斬の対峙》の裏面から速攻の能力が削除されることになりました。
ドラフトがメインの私としては、流石にアルケミーまでは追い切れなくて、最早今のアルケミーメタ環境がさっぱり分からないのですが、該当告知の書き方からするに、赤単がトップメタみたいです。追加の火力スペル等がダメ押ししているのだと思われます。
そんな赤単のバリエーション全てに採用されている《熊野と渇苛斬の対峙》はローションまでの三か月も許しておけねぇ……ってなった模様。アルケミーのみで使える《衝撃的な悪戯》もマナコスト増加というナーフ措置が入るみたいです。
《熊野と渇苛斬の対峙》はことBO1においては強力であり、開発側も許される分水嶺に立っているという認識をしているみたいです。今後の環境次第ではスタンダードでの禁止もあり得るということなんでしょう。
開発は紙のカードを売りたいから、紙のスタンダードを活発にしたいうようですが、すでにスタンダードの主流はMTGアリーナですし、更に言うなら人口的にはBO1が多数派です。BO3の上位トーナメントで結果が出てなくても、BO1で強すぎるカードとして注視されていると見て良さそうです。
強すぎるという理由ではないですが、MTGアリーナのBO1でのみ禁止は過去に例があるわけで……。
次のスタンダードセット「エルドレインの森」のプレビュー直前である8/7には、再度の禁止改定が予告されているので、アルケミーとスタンダードの違いはあれど、喉首にナイフを突きつけられている《熊野と渇苛斬の対峙》なのでした。
見事に環境が一変しましたね。とくにアトラクサリアニ関連、あと銀行破りとか宝物トークンを捌く頻度が減ったからか兄弟仲の終焉も見なくなりました。青白とか白単はほぼ変わらず、黒単はいまだ健在。この辺りは秋までにどう変化していくのか気になります。
鏡割りの寓話の数字の2に関する考察は気がつきませんでした、なるほど……