
- ストーリー: 5点
- グラフィック: 6点
- サウンド: 4点
- ゲームプレイ: 5点
- 作り込み: 5点
- 10点: 史上最高(100年に1度)
- 9点: 10年に1度の水準
- 8点: 年間トップクラス
- 7点: 十分におすすめできる
- 6点: 普通水準で、おすすめできる
- 5点: 普通水準
- 4点: 明らかな失敗が見て取れる
- 3点: 良い部分がほぼない
- 2点: 失敗では済まされない
- 1点: 史上最悪(100年に1度)
目次
ゲーム概要
1349年……世界は黒いネズミに包まれた……。A Plague Taleは中世ヨーロッパ後期を題材にしたポストアポカリプスアドベンチャーです。

終末ものとしてはゾンビ題材のものがポピュラーですが、本作では地中から湧き出す黒いネズミがそれを担当しています。
創作の世界では、黄色くて電気を発するネズミや、著作権に五月蠅いネズミや、見た目がキモくてリテイクを喰らった青いネズミなどがいますが、本作に登場するネズミはバリバリのモンスター。
噛みつかれるとマキュラ(劇中で表現がぶれていますが、恐らくはバイトと同じもの)という死に至る病に掛かりますし、肉を喰らった後の人骨を使って巨大な巣を作る習性を持つなど、エイリアンの類じゃないかと思わせる凶暴さで、主人公アミシアの行く手を遮ります。

主人公のアミシアは地方貴族の娘です。
異端審問官の襲撃などもあって、弟のヒューゴと共に逃避行を余儀なくされたアミシアは、境遇を同じくした仲間と共に、異端審問官やネズミの群れと闘うというのが物語の本筋です。
錬金術が存在するファンタジー作品になっており、ダークファンタージーや西洋児童文学に近い趣を持っています。
ゲームの方向性としてはステルス要素も多いですが、中盤以降はスリングショットや、アビリティで敵と戦うパターンが増えます。比重が異なるとはいえ、リニアなアドベンチャーゲームの形を踏襲しています。
グロゲーですが、あんまりホラーではないです。
以下、ネタバレありの内容になります。
ストーリー: 5点
- 闘うヒロイン像が確立されている
- 弟の存在感、造形が邪魔ですらある
- キャラクター描写の稚拙さと整理不足
- 強引すぎる展開の数々
アミシアのヒロイン感
15才の少女を主人公としたジュブナイル、今だとヤングアダルト作品に属する作風です。ちょっと年齢層が上がった海外性ラノベみたいなもので、方向性としては同じ女性主人公のハンガーゲームとかが近いんでしょうか。
降って沸いたような悲劇によって生まれ故郷を追われたヒロインが、集まってきた仲間と共に巨大な組織に反抗する話です。
主人公のアミシアに関しては丁寧な描写になっていますし、困難と闘うヒロインというキャクター性が確立しています。ときには悩みながらも決断し、終始一貫して最善の行動を取ろうとするので、主人公らしい主人公になっています。
ドンブラージ城に集まった旅の仲間に関しても、同性の友人である盗賊メアリ、知識でサポートする錬金術師の卵ルーカス、腕力でサポートする鍛冶屋タンクのロドリックと、アミシアを中心としてバランス良く役割が配置されています。
1人空気の爆弾魔アーサーがいますが、行き場を失った子供達が城に集まり、団結して困難に挑むという西洋児童文学の形を踏襲しており、そのまとめ役であるアミシアは魅力的なヒロインとして描かれていると思います。
要らない弟
一方で割をくったのが弟ヒューゴの存在です。
彼は物語上というか、設定上のキーパーソンではあるのですが、ストーリー進行の都合によって振り回されたり、不味いだろう描写で多かったりで、庇護対象としての役割(プロット上の意味とでも言えば良いのでしょうか)を果たしていません。
善悪の明確な描写が無いことも手伝って、劇中の情報だけだとヒューゴこそが騒動の発端、諸悪の根源とも取れることから、かなり邪悪な存在に見えてしまう。
あれだけ助けてもらっておいて、アミシアなんか要らないとか言い出しますし、姉弟の絆を表現するにはマイナスになる行動が多すぎます。
ヒューゴは五歳という年齢にまた救われていますが、自分が「悪」だと気付いていない、もっともドス黒い「悪」……。あれ、こんなキャラクター最近別のアニメで見たような……。

実際は決定的な情報が出ていないだけで、ネズミのアレコレも異端審問側が引き起こしたことなんでしょうが、まぁ脚本の不足が禍したのだと思います。取っ掛かりは良かったのですが、後半になるにつれて段々と構成が雑になっていきます。
テーマ性はあるが強引すぎる
世界観は中世後期ですが、マキュラ、錬金術、ネズミトルネードなど、現実の世界とは考えにくい要素が出てくるので、それをモチーフとしたファンタジー作品だと思われます。
現実の中世後期だと、ペストが流行して、ヨーロッパの人口が激減しているですが、それをモンスターネズミ等に置き換えたというのが素直な捉え方でしょう。三国志の時代とかもそうですが、飢饉や疫病が起きると、人口半減とかそういうレベルで被害が出るのがまことに恐ろしいところ。
プリマ・マキュラという特異存在の設定も、いわゆる魔女や土着信仰のメタファーであり、教会権力と地方宗教、ローマ・ギリシャ文化の対決が根底にあるのかなぁ……とは思うのですが、肝心の描写が割と雑なので、テーマを及第点レベルに描写できたか? と言われると疑問が残ります。
説明不足なので決定的な解釈はありませんし、なんでこうなったという部分が多いです。
イノセンスというサブタイトルからして、生きるための悪事、やむを得ない悪行を描きたかったのだとは思うのですが、途中でぶん投げてしまった印象です。結局のところ着地点がずれてますし、問題を矮小化してしまって、色々とうやむやになっています。
荒々しい部分が散見されるので、もうちょっとプロットの見直しが必要だったと思いますが、総評したら可もなく不可も無くという形になるとは思います。
グラフィック: 6点
- 洋ゲーらしからぬ美少女
- 不気味さが強調されたネズミの巣
- 背景は書き込まれている
- サブキャラクターのぎこちなさ
最近の洋ゲーは無闇にリアル路線なので、なんでそうなったというキャラクターデザインのケースが多いのですが、本作の主人公は普通に美少女路線です。
ただしキャラクターの表情がぎこちなく、サブキャラクターに関しては力尽きた感の残るディティールになっています。
背景の書き込みは丁寧ですが、ロケーションが似たり寄ったりなので、あんまり冒険している感じではないのが残念。
サウンド: 4点
- 世界観にあったBGM
- 英語音声がぎこちない
私はネイティブではないのですが、なんか英語音声が棒読みっぽく聞こえます。
開発元がフランスだから……でしょうか?
追記。
コメント欄での情報提供によればフランス訛りらしいです。日本語吹き替え時にルー語でしゃべるようなものか。むしろ変だと思うのは私だけか……?
こんなことを評価していたら、吹替界隈が滅茶苦茶になるのは目に見えているので、適当な人気俳優を声優に起用する以下の判断だと思います。
一発ネタにはなるかもしれませんが、クオリティ的には明らかにマイナスです。
ゲーム性: 5点
- ネズミの習性を使ったパズル要素
- 敵AIが旧態依然としたアホさ
- パターンに乏しいので飽きやすい
- 割とごり押し
ステルスやパズルを主体としたゲームだとは思うのですが、ゲームの丈に対して要素が不足しているので飽きやすいです。リプレイ性云々以前に、同じような解法が多すぎました。
錬金術による合成で、アミシアの能力が段々と強化されていくのですが、マップ構成や敵のレベルが殆ど変わらないので、段々と力業になっていくというデザインになっています。
アミシアの防御力はずっと紙のままなので、終始1発KOではあるのですが、敵兵をバッタバッタ倒すようになるので、良くも悪くも大味なゲームです。
敵AIが残念なのと、ステージ構成に甘さがあるので、緊張感には欠けると思います。追われる物々しさがもうちょっと表現できていれば良かったのですが……。
あと非殺傷プレイの方が良いのかと思って、私も最初は狙っていましたが、面倒臭くなったので諦めました。人道的な選択を誘導するようなイベントがあるのに、まず無理な局面ばかりなので、意図したものにしろ、特に考えてなかったにしろ、自由度があるとは言いにくいです。
ほぼほぼ4点だとは思いますが、迷ったときには中央に近い点を付ける方針なので、おまけして5点です。
作り込み: 5点
- バグが少ない
- チェックポイントが多い
- リプレイ性がない
- 突然の日本語サポート外し
バグらしいバグはないです。
発売日当日に日本語のサポートが外れました、まぁバグではないですしね。翻訳が間に合わなかっただけだから、6月にはサポートすると公式が説明していますし、内容は複雑ではないので英語字幕でも問題ないと言えば、問題ない。
内容にしてはドタバタしていて、過不足ないけど、完成されてはいないといいますか。むしろ不要な部分をカットしても良かったかなぁ。水増し感が強いです。
また周回プレイをするような内容でもないです。
こちらもかなり4点よりですが、迷ったときには中央に近い点を付ける方針なので、おまけして5点です。
まとめ
最近は割と多いバディもののゲームなんですが、姉と弟という題材なのは珍しい。ただし、それがチグハグで、ちょっと難が残ります。
そもそもストーリーがゲーム向きではないというか、元々原作があって、それをゲームにしたような内容なので、どういう形でゲーム開発が進んだのか、気になるところではあります。
弟のヒューゴは劇中のキーパーソンですが、物語の上で必要なキャラクターではないですし、劇中にルーカスというできた弟分もいるので、初稿だと居なかったのに、後から足したんじゃないか……という疑念すら生まれる。
まず魔女アミシアと異端審問官の対決という世界観とシナリオが上がって、そこからバディ制のゲーム向けに改変したら、なんかチグハグになってしまったという雰囲気が感じられます。
実際のところは不明ですが、要するにそれくらいに微妙な流れを含んでおり、整理されていないということ。お勧めするには満遍なく足りてない感じのゲームなのです。
意図的なフランス訛りにしてるって教えられたうえで「作品としてのクオリティにはマイナスです」は酷すぎでしょ
ユーゴはずっと隔離されアミシアと会話することも顔を合わせることもしてなかった関係です
普通の姉弟とは違い互いを信頼しきれておらず気持ちのすれ違いが起きて当然です
筆者さんは元から子供が好きじゃないってだけなんでしょう
あと錬金術は一応は化学でファンタジーでありません
五歳なんだからそういう姉への感謝も理解できないのは当然では
プレイ中のユーゴはアミシアの指示ちゃんと言うことを聞く良い子だと思いますけど
英仏語でA plague tale 公式サイトに制作の流れが開発者自身から説明されてますよ。
はしりがきさんの推測が、ほぼ全部的外れなのは、残念なかぎり。
特にユーゴが後付けの存在かも?とは!
それから、海外ユーザーからの英語版の吹き替え評価の高さをご存じないとは!
あれ、わざわざフランス語アクセントを英語に付けたという芸の細かさなんですよ?
バグが少ないは同意しますが。
いつも読んでます。
辛口すみません
前から思ってましたが
げぇむはしりがきさんの、何か他のものを連想した時に
画像だけスッ…と添える書き方が笑えて好きです。