2025年11月12日に発表され、11月21日に施行されるPS5の一部モデルの価格改定と、現在の日本市場におけるPS5の動向についての所感です。
国内シェアの低下は割と致命的で、デジタル専売ではSwitch、Switch2の牙城が崩せるとは思えないものの、無理のない範囲で話題を取れる悪くない選択だったと思います。
すでに次世代ハードの足音が聞こえてきており、性能をアピールできる状況では無くなりましたが、未だにPS4が半数を占めている状態。PS6を出すにしても、廉価なハードで地道に移行を促すべきだと思います。
これまでのPS5
PS5は2020年に発売され、当時のゲーミングPCのミドルレンジ帯であったRTX2060水準のグラフィック性能を持った家庭用ゲーム機です。
前世代のPS4からは約4倍のグラフィック性能、10倍以上のCPU性能アップを果たし、ライバルであるXboxとのし烈な争いを繰り広げました。このときのXbox陣営はPS5PROを4万円レベルの異様に強気な価格設定をしており、PS5も急遽販売価格を引き下げたものと思われます。

奇しくもPS5の発売時期にはマイニングブームが到来しており、その影響でGPUの生産ラインはひっ迫していました。感冒の影響もあって、PS5の生産数は尚更に伸び悩み、市場流通は大幅に停滞しました。
それに拍車を掛けたのが、中国への転売需要です。正規に流通していないから、日本で買って輸送するという動きが活発化し、一部はマイニング用の基板になっていた事も確認されています。
ソニーが日本市場を軽視しているという風説もこの頃に生まれました。
日本における転売と赤字を抑えるためか、PS5は本体価格上昇が相次ぎ、発売当初の1.5倍という高額ハードになっています。

ライバルのXboxには勝ったものの、世界規模でPS4を下回る売れ行きであり、未だにPSN利用者の半分はPS4からの接続という話があります(世界、ソニー公式からの情報)。
まして、日本市場ではNintendo Switchに大きな溝を開けられており、その後継機であるSwitch2には早くも実動数で迫られつつある――そう思える統計情報まで上がってきています。
そんな中で降って沸いてきたのが、PS5デジタルデラックス版の値下げでした。転売対策として日本語専用というのは、先のNintendo Switch2に追随する形です。

デジタル限定の問題
期間限定で1万円程度の値引きは度々ありましたが、恒常的な2万円の値下げはPS5では初めての試みです。これはロケットスタートを決めたNintendo Switch2に対する対抗措置と見られますが、国内における大きな劣勢を覆せるかは怪しいです。
過去の話だとプレイステーションVita、最近の話だとXbox Series Sが失敗したように、デジタル限定といのはコンシューマ機のメイン顧客には合いません。旧作の物理メディアを安くプレイできる、友人との貸し借り不可、中古下取りに出せない等々、デジタル限定のデメリットが倦厭されます。
PS5のデジタル限定版はシェア率20%程度であり、80%はディスクドライブ付属の通常版です。
Xbox Series Sは最新ゲームも動く3万円の新型ゲーム機として、価格破壊も価格破壊のレベルで売り出しましたが、上位版であるXbox Series Xの40%止まりでした。高価格な少数の上位版、廉価な多数派の下位版というハイローミックス戦略は完全に失敗しています。
マイクロソフトもSeriesXが売れないまでも、SeriesSがここまで不発とは思っていなかったでしょう。
DL販売の売り上げが70%と言われますが、それはデジタル課金、格安になっている過去作のDL販売が主体です。新作タイトルのDL比率は良くて40%程度に留まっており、相変わらずパッケージの割合が半数を超えています。これはソニー傘下のスタジオからの流出資料から裏付けが取れています。
狙いは悪くない堅実な一手
とはいえ、現状の国内PS5が置かれた状況を考えると、今回のバージョン限定値下げは悪くない手段だと思います。極端な成功はないけれど、極端な失敗もないだろうという試金石です。
この手の急激な値下げは利益の減少どころか、売れば売るほど損をする逆ザヤのリスクを生じます。度が過ぎると債務超過を起こして、状況的には破産状態となりかねませんが、前述の通りデジタル限定版は人気が無いから売れません。売れに売れて、債務が膨らみ続ける心配は少ないわけです。
デジタル限定のソフト売り上げは、小売り店舗の利益も省ける公式ネットストアのみで、ソニー側の利益も最大化されます。中古の販売による値崩れの影響も多少は抑えられます。基本プレイ無料系もソニー側が手数料を取っているので、本体の販売で失った利益をPSNの利用で取り返せるわけです。
国ごとのデジタル比率も極端な差はないので、どの程度の価格差があれば、顧客がデジタル販売を優先してくれるかのテストにもなりそうです。
家庭用ゲーム機の市場規模だと世界2位の日本で苦境に立たされているソニーとしては、ニュースになることで若年層の知名度を回復しつつ、将来的なPSNの大規模化に望みを繋げることができます。
ライバルの動向
当面のライバルはNintendo Switch2になると思いますが、10年の間にブランド力の差が開いてしまったので、国内で盛り返すことは困難だと思われます。

性能的にはPS5が3~4倍以上の能力であるものの、昨今のゲーム開発においてその差は軽微です。
ゲーム機の性能が向上したことによって、解像度の上昇、フレームレートの上昇がようやく達成されました。メインハードで動作に余裕があるので、よっぽどおかしな設計をしない限りは、下位への移植ができる状況になったのです。
PS5でFHD、60FPSのゲームなら、Switch2でHD、30FPSで動いてしまう。
そして性能だけならゲーミングPCという上位グレードが存在しており、来年にはXboxの次世代版、Steam Machineといったライバルが登場すると言われています。

国内でXboxや、Steam Machineで売り上げが落ちることは99%無いと思いますが、PS5に目新しさ、性能的なアドバンテージが無くなっているのは間違いありません。
PS5の基盤を流用したマイニング用PCによって、PS5≒RTX2060という性能の裏付けは取れていますが、5年前なら同世代のミドルレンジでも、今となってはローエンド以下。同等品が終売になっている状態ではあるものの、昨今の事情だとハードの更新に迫られているとは言えません。
国内で受けるようなキラータイトルももう無さそうなので、ここからの飛躍は無理でしょうが、ソフトの高額化で新作タイトルが売れない時代になりそうなので、慌ててPS6を出さない方が良いのではないかと思います。




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