- ストーリー: 6点
- グラフィック: 7点
- サウンド: 6点 (+1)
- ゲーム性: 5点
- 作り込み: 6点 (+1)
- 10点: 史上最高(100年に1度)
- 9点: 10年に1度の水準
- 8点: 年間トップクラス
- 7点: 十分におすすめできる
- 6点: 普通水準で、おすすめできる
- 5点: 普通水準
- 4点: 明らかな失敗が見て取れる
- 3点: 良い部分がほぼない
- 2点: 失敗では済まされない
- 1点: 史上最悪(100年に1度)
ストーリー
- 王道の勧善懲悪ファンタジー
- 昔ながらのドラクエ
- 流行も押さえた構成
- ファン向けの要素あり
- 序盤の展開が散らかっている
- 逃亡者要素が生かせていない
原点回帰を題材にしているためか、どこかで見たような展開が非常に多いファン向けの作風になっています。
メインフレームは明確な勧善懲悪の王道RPGで、典型的とも言える貴種流離譚になっています。要するにいつものドラクエ。教義的な側面が強く、童話的な穏やかさがあり、登場人物は物わかりの良い人が多いです。
村や町毎にドラマがあり、村人の生活感が表現されているのはまさにドラクエらしいのですが、加入する仲間が多いこともあって、序盤の展開が緩慢すぎるきらいがあります。今作においては、主人公も終われる立場なので、その点を踏まえてスピーディーに展開する方が、スリリングに演出できたと思います。
勇者の存在が前面に出てくるのは割と久々ですが、それに加えて頼りない主人公の成長譚という側面も持ちます。
主人公自身は喋らないくせにやたらとキャラクター性が垣間見えるというか、なんか良い奴なんだけど間が抜けてて、子供の頃はやんちゃだったけど、成長するに従って大人しくなった内向的な男性って感じになっています。
何度かターニングポイント、急展開を迎える部分がありますが、多少強引だったりチープだったりしても、世界観との齟齬がないので、全体としては上手く纏まっています。
悪は滅びて、善人が報われるため、拒絶反応を示す人も少ないはず。
各種要素を上手く使いこなせたかというと怪しい部分が多く、シンプル過ぎて高い評価を付けるのは難しいですが、時代の流行を追って、丁寧にテキストが組まれていて、読み物としての完成度は高いです。
グラフィック
- 優れたトゥーンレダリング
- 3Dモデルの再現度が高い
- 下品にならないあざとさ
- 戦闘のカメラワークに迫力がない
- ボスのデザインが雑
進化が目覚ましかったファイナルファンタジーシリーズに比べて随分と後れを取っていた部分ですが、ようやくグラフィック面が高い水準に戻ってきました。完成度の高いトゥーン系、ドラクエの3D化を実現しています。
ポリゴン数が増えたので、鳥山デザインの再現度が飛躍的に増しています。スピンオフのドラクエヒーローズで存在した違和感みたいなものがかなり改善されました(まぁ、開発元は違うんですが)。
スライムはまさにスライムだし、キラーパンサーはまさにキラーパンサー。過去作の絵をそのまま変換したようなグラフィックを再現しています。元が分かりやすいデザインなのも助けとなり、ほぼ完成形に近い仕上がりだと思います。
仲間キャラクター達もちょっと古くさい感じのアニメ調で、エネルギッシュだった頃の鳥山作品を彷彿とさせます。
3Dモデルのエマやカミュにちょいちょい不気味さの谷を感じることがありますが、ライティングをちょっと弄ればすぐに改善するような気がします。
あと特筆すべきこととして、モブ女性キャラがやたらと良くできています。パーティーメンバーも良くできているんですが、友情! 勝利! エロ!というジャンプのノリに忠実です。ちょっと狙い過ぎな部分もありますが、下品にはなっていないです。
サウンド
- 旧作のBGMを活用している
- CVなし (通常版のみ)
- 新規BGMのパワー不足
すぎやまこういち氏御年85歳。ギネスに載ってしまった高齢の作曲家だけあって、やはり往年の頃のキレは失われている気がします。
新曲で過去作に匹敵するようなスコアは無く、また作業が難航していたのかBGMの使いどころも少しずれている印象。音響系の演出にはもう少し工夫が必要だったでしょう。
それでも過去に使われたBGMの良さは健在で、序曲や冒険の旅の良さを再確認できます。再録曲の存在は本作の救いとなっています。ドラクエ3のフィールド曲「冒険の旅」が流れ出したときが非常に印象的です。
あとキャラクターボイスですが、2015年に発売されたリメイク8では採用されているのに、本作では再びオミットされています。ヒーローズは割と違和感の残るキャスティングでしたが、リメイク8は上手く嵌まっていたので、それが無いのはやはり残念です。
完全版のSでは採用されているので、そちらには加点扱いです。
ゲーム性
- コマンド式RPG初心者にも最適
- 明確に万人向けの調整
- キャラ性能が差別化されている
- 目新しさがない
- フィールド探索に難あり
オーソドックスなコマンド式RPGで、成長システムもそれぞれのパネルから選択するだけのシンプル構成です。
パネルを取得するためのコストが重めなので、序盤の単調さが気になるのですが、ある程度進めるとキャラクターの個性付けとして機能するようになります。その塩梅もいい具合に定まっているので、どのキャラクターにも見せ場があります。
レベルアップで覚える呪文が残っているので、全てをスキルパネルと紐づけて、特定レベルで自動開放される形の方がベターだったとは思いますが、シンプルに無駄のないギミックになっています。
(全部スキルパネル連動にすれば、スキルパネルの取り忘れを知らせる誘導になるし、別の場所からツリーを伸ばすという選択肢を生み出せるから)
新要素のキャンプポイントは街の施設より便利なので、宿屋や教会の存在感をすっかり喰ってしまいました。またキャンプ地点が多すぎて有難味が薄いので、もう少し数を減らすなり、雑魚敵を強くするなりの調整が必要だったと思います。
普段ゲームをしない人でも大丈夫な、万人向けな調整になっていますが、慣れているプレイヤーにとっては物足りないものがあります。
乗り越えられない段差や、飛び降りられない足場、古くさい部分と流石に世話を焼きすぎだろ的な新しい要素があわさって、冒険感を減退させている側面は見られます。
下手にグラフィックが良くなったため、常識的に行けそうなのに実際には降りられない段差、登れない場所が目立つようになったし、モンスターの配置が密集しすぎていて棲息感にも欠けます。
これらの要素は、マシンスペックの上昇に伴って避けて通れなくなってきた部分なので、今後も同シリーズの課題になってくるとは思います。
作り込み
- 目立つバグなし
- 万人向けという形で一貫してる
- シリーズ作品としての肝を押さえている
- 戦闘演出によってテンポが悪い
- 移動速度が遅い(通常版のみ)
一週目の段階で成長システムなどを一通り体感できるので、周回プレイしようという内容では無いですが、そもそものプレイが結構長めになるので、ハイボリュームなゲームだと思います。
また過去のシリーズにあったような、山場を越えてからの追加要素、ファンサービスもあるので、作り手の熱量を感じられる作風になっています。
飛び抜けた部分はないものの、スタンダードなJRPGというか、スタンダードなドラゴンクエストになっています。旧来までのファンに対するアピールも大きく、流行を取り入れた集大成になっています。
細かい改善点は残っているものの、ココ数年では一番のドラクエ。完全版では移動速度の遅さもケアされたので、ユーザビリティも更に向上しています。
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