ポケモン民話集 「バクフーン(ヒスイの姿)」

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2024年10月13日にポケットモンスターの開発元であるゲームフリークから機密情報が大量流出し、海外を中心に様々な資料が公開されています。

本稿はそんなリーク情報の中に含まれていた文書のうち、話題になっている「バクフーン(ヒスイの姿)」の創作民話まとめです。原文に誤字脱字があるので、一応修正しています。

海外ではロリコンのバクフーンとしてミーム化しており、大変な話題となっていますが、実際はそういうセンセーショナルな内容ではないです。あくまでポケモン世界の昔話、グリム童話くらいのニュアンスで、世界観を構築する際の補助資料だと思われます。

本文

P1

テーマ:人とポケモンの関係/人間的(らしい)思考法

昔。ポケモンと人間の境が曖昧だった頃。

あるところに村があった。 ある日、その村の少女が山へ薪を集めに出かけた。 山の奥にはよく乾いた枯れ木が見つかったので、少女はどんどん奥深くへ進んでいった。

気がつくと日は傾いていて、少女は道に迷っていた。 辺りにはバクフーンの糞が転がっており、少女は不安になった。

すると森の向こうから一人の男が現れた。 男の顔は、村に住む男の誰にも似ていなかったが、とてもハンサムだった。 男は言った。

「君は道に迷っているのだろう?僕は山を降りる道を知っているけれど、君の足では真夜中になってしまう。明日の朝連れて帰ってあげるから、今日は僕のところで休まないか?」

少女はしかたなく男の言う通りにすることにした。 男は少女の手をひいて歩きだした。日が暮れる頃大きな洞穴にたどり着いた。

「ここが僕の家だ。おなかが空いているだろ? 待っていて」

男はそう言うと、洞窟の外へ出て行った。 男が出て行ってから暫くすると、山の遠くが赤く光り、木々が揺れる音がした。 やがて男は沢山の赤い木の実を抱えて帰ってきた。男は言った。

「これを食べたら今日は寝よう。僕より先に目が覚めても、僕の顔を見ないでくれよ」

翌朝少女が目を覚ますと、男はまだ眠っていた。 少女は男との約束を守って横になったまま待っていたが、やがて再び眠りに落ちた。

P2

男の声で少女は目覚めた。外を見ると日がすでに傾いていた。

「今日は緑の果物を食べよう。待ってて」

そう言って、洞窟の外へ出て行った。 男が出て行ってから暫くすると、山の遠くが赤く光り、木々が揺れる音がした。 日がすっかり暮れた頃、男は沢山の緑の木の実を抱えて帰ってきた。 男は言った。

「これを食べたら今日は寝よう。僕より先に目が覚めても、僕の顔を見ないでくれよ」

少女は家族が心配しているので早く帰りたいと言うと、 男は大きなあくびをして少女の頭を叩いた。 すると少女は、家族のこと、家のことをきれいさっぱり忘れてしまった。 そして二人で緑の木の実を食べて、眠りについた。

次の日も二人は日が傾く頃に目覚め、男は木の実を取りに行き二人で食べて、また眠った。 そんな暮らしが続き、やがて少女は男がバクフーンであること気がついた。

冬が近づく頃、バクフーンは洞窟の奥を掘りだした。そして少女に言った。

「薪なる木を集めておいで。できる高い木の、上のほうの枝を折っておいで」

少女はバクフーンの言う通りにしようとしたが、高い木は恐ろしかったので、低い木にしか登れなかった。 枝をいくつか集めて帰ると、バクフーンは言った。

「駄目だよ、もっと高い木の枝でなければ人間に見つかってしまう」

雪が降り始めると、二人は深くなった穴の奥で、眠りながら暮らした。 食べ物はたくさんあった。 たまに目覚めて食事をし、また眠った。 ある日に目覚めると、少女は1人の子供を抱いていた。 何日かの昼と夜が過ぎ、少女が目覚めると、バクフーンは言った。

P3

「君のお父さんが君を捜している。だけど君は私の妻だから返すわけにいかない。彼と戦わなければいけない」

「やめてください。お父さんを殺さないでください。家族を殺されてどうしてあなたと生きていけるのです。あなたいい人です。だから外に出ないでここで眠りましょう」

「分かった。ここで眠ろう」

バクフーンはうなずいた。

次の日の夜、バクフーンは少女を起こして言った。

「君のお父さんがすぐ側にいる。外を見ておいで」

少女が外へ出ると辺りは吹雪いていた。少女は低い木に登り、その枝を折った。 洞窟に戻ってくると、バクフーンは歌っていた。聞いたことのない歌だった。

「君は木の枝を折ってきたな。間もなくここに君のお父さんがやってくる。これから私は君のお父さんに悪いことをしに行く。もし私が殺されたら、私の目と声と心を貰うんだ。そして私の殺された場所に火を焚いて、それを燃やして欲しい。そして燃え尽きるまでこの歌を歌って欲しい」

少女は言った。

「やめてください。お父さんを殺すなんて。やめてください。あなたが殺されてください」

「さよなら。二度と会う事もない」

そう言うと、バクフーンは外へと出て行った。しばらくすると、大きな物音がして、少女は外を覗いた。 すると少女の父親がバクフーンを殺していた。

P4

少女は外に飛び出して、父親に言った。

「お父さんは息子を殺しました。私は今まで彼と暮らしてきました。彼は私の夫です。夫の、バクフーンの目と心と声を私に下さい」

少女はバクフーンが殺された場所で火を焚いて、目と心と声を炎にくべた。 そして燃え尽きるまでの間、バクフーンに習った歌を歌った。

少女の父は、村のはずれに小屋をつくって、少女と子供を住まわせた。

やがて春が来た。

村の若者たちは、少女とその子供をよくからかい虐めた。 それは日増しに酷くなり、あるとき、バクフーンの毛皮を被せようとした。 少女は家に戻り、両親に訴えた。

村の若者たちは、女の子と、女の子の連れていた子供をからかったり虐めたりしました。日に日にそれは酷くなり、ある日には、バクフーンの毛皮をかぶせようとしました。 女の子は家に帰って両親に訴えました。

「私たちをからかわないよう村の人たちに言ってください。あの皮を被れば、きっと私たちはバクフーンになってしまいます。 もう今だって半分バクフーンなのです」

両親が話をしても、村の者たちは聞き入れることはなかった。 それどころか、ますます面白がって、少女と子供にバクフーンの毛皮をかぶせた。 すると少女と子供は大きな声で吠えた。そして、二人は森の奥へと消えていった。 二人は二度と戻ってこなかった。

そういうことがあって人々は知った。 バクフーンは半分人間なのだ。

考察

ヒスイバクフーンのゴースト部分?

ヒスイの中心にそびえし霊山の気が影響した姿と考察。行き場を失いし霊魂を己の炎で浄化し送ると言う。

Legends アルセウス

バクフーンの原種と違い、ヒスイのリージョンフォームではゴースト複合になっています。このゴーストの部分は人間由来のものである――という創作民話と思われます。

執筆タイミングは最初のDP開発時なので、Legends アルセウスのときに、この話を膨らませて、バクフーン(ヒスイの姿)が生み出されたと考えるのが妥当です。

少女を引き留めて返さなかったバクフーンも元は人間だった可能性があり、異なる宗教観を持つコミュニティ外の人間を表す寓話的な側面も見え隠れしています。

バリエーション(ケッキング)

登場人物がケッキング、イノムーになっているほぼ同じ内容の文書が存在します。完成度という点ではバクフーンの方が上なので、決定稿ができる前の試行錯誤の段階で生み出されたものと思われます。

少女をさらうのはゴリラということで、内容的にはキングコングを想起させます。

こちらのバージョンでは、主人公の少女に意地悪な弟が存在しており、最後に皮を被せるのはその弟です。そして弟はケッキングの姿になった少女に殺害されています。ついでとばかりに母親も殺されます。優しかったと父親だけは生存しており、どこか家庭内不和みたいなニュアンスが感じられます。

最後はケッキングの半分は人間だから、今でもケッキングの肉を食べたりしないと締めくくっており、少し無理がある着地点となっています。

バリエーション(イノムー)

こちらは登場ポケモンがイノムーであることを除けば、いよいよバクフーン版と内容は同じです。無駄な部分が削除され、洗練したテキストになっています。

ただし、話の流れからしてイノムーだと違和感があり、どのポケモンを当てはめるべきか考えてみて、最後はバクフーンに落ち着いた――みたいな流れじゃないでしょうか。

やっぱり二足歩行じゃないのは無理がありそうですし、炎を使った鎮魂の儀式みたいな場面で氷タイプだと変な気がします。

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