例によって、あとは将来貰えるパックで、レアまではほぼ揃うだろうというラインまでドラフトを回してみたあとでの所感など。
前の「機械兵団の進軍」が派手派手、お互いに大砲を持って撃ち合うような凄い環境だったので、それに比べると地味になりました。
環境的には圧倒的に黒が強く、また指輪の誘惑によってアグロ優勢の高速環境になっています。飛び抜けて強すぎるカードがチラホラ混じっており、ボムは少ないけど、踏んだときの致命傷率が高すぎる印象です。
目次
概要
指輪があなたを誘惑する
本セットの目玉でありリミテッド環境を高速化させている原因です。指輪の能力は紋章であり、コントロールするクリーチャーの1体が指輪所持者になります。
指輪所持者には、誘惑した回数によって、以下の能力が随時追加されていきます。
- 指輪所持者は伝説であり、自身よりも大きなパワーを持つクリーチャーにはブロックされない
- 指輪所持者が攻撃するたび、カードを1枚引き、カード1枚を捨てる
- 指輪所持者がクリーチャーにブロックされた状態になるたび、戦闘終了時に、ブロックしたクリーチャーを生け贄に捧げる
- 指輪所持者がプレイヤーに戦闘ダメージを与えるたび、対戦相手は3点のライフを失う
特に重要なのが1、2の能力であり、最大限に活用するとゲーム展開をかなり整えることができます。過去の環境に存在した《合鍵》という装備品に相当する効果です。
その後の能力についても強力ではあるものの、盤面が固まった後のダメ押しという側面が強いです。
ルーティングを活用するならデッキ中に指輪4枚以上、指輪を軸にするなら8枚程度は欲しいです。
指輪の運び手としての適性から、指輪物語のリミテッド環境ではパワー1や2のクリーチャーが活躍します。小型のクリーチャーが後半になっても腐らないので、序盤から並べていく展開が理想ですし、受けるデッキは難しい側面を持っています。
敵の指輪持ちを止めやすい関係から、PT1/3、PT1/4などの尻がデカいクリーチャーが何枚かあると序盤の攻防で有利になります。
黒の勢力が台頭
最近のリミテッド環境では多少は荒れていてもある程度は色のバランスが取れているのですが、指輪物語では圧倒的に黒が優勢です。
クリーチャー、除去、コンバット、ハンデスなど、コモンですらかなりの粒ぞろい。動員によってアドバンテージを稼ぎやすく、指輪も誘惑にも長けています。
もちろん場の流れ次第の側面はありますが、勝率を考えるならば取りあえず黒をつまむのが良いかと思います。
黒 > 赤 > 白 = 青 > 緑
――くらいのパワーバランスです。緑は大型クリーチャーが環境に適しておらず、マナクリ頼みで不安定過ぎます。端的に言って、サウロンの勢力が圧倒的に幅を利かせています。
主人公であるフロドに当てはめられている白緑などは弱めであり、相当にパーツが良くないと黒の勢力に対抗できない状況になっています。原作どおりと言えば、原作どおりの状況です。
白緑ならホビットオールスター、青緑ならエルフオールスターであることが求められます。
どうしようもないカードが多数
多数の入門用セット向けのカードに、エターナルフォーマット向けのレアが混在しているようなセットなので、一部のカードがゲームを滅茶苦茶にしてきます。
過去にもボムレア環境だと揶揄されることは多々ありましたが、今回のそれは「真紅の契り(VOW)」に匹敵しています。指輪でルーティングが捗るため、高速環境であってもポロっと出てくることが多いのもVOWと同じです。
全体除去と違って予備動作もまったく見えないし、且つ無色のアーティファクトが多数あって、マナコストが軽いのに大体致命傷になります。
クリーチャーについては除去を厚めにして対策できたら良いですが、出されたら終わりという諦めの心も大切です。
本環境は黒系のデッキを使うのが安牌ではあるものの、こういったカードを採用できるのなら、他の色を軸にしたり、それが伝説ならば色を足したりする価値があります。
色の組み合わせ
先に触れたとおり、黒がかなり強いので、黒がらみのアーキタイプをできるだけ選択したいです。
指輪の効果によって、壁が機能しない場合が多く、アグロ戦略に沿った序盤から圧を掛けられる軽めの構成が望ましいです。
中心色 | 評価 | 速度 | 方向性 |
---|---|---|---|
(アゾリウス) | C | 低 | 2枚目のドローで誘発 条件が厳しいので指輪のLv2依存 |
(オルゾフ) | A | 高 | トークン軸だけど、グッドスタッフになりやすい |
(ボロス) | A | 高 | 人間の部族、食物によるアグロ |
(セレズニア) | C | 中 | 食物シナジーに特化。 爆発力はあるが、必要パーツが厳しすぎる |
(ディミーア) | B | 低 | オーク動員コントロール 低速系で唯一成立している |
(イゼット) | A | 高 | いつものイゼットスペル 指輪を伸ばしやすい |
(シミック) | C | 中 | 占術特化 必要パーツが揃わず、また展開力も低い(最弱) |
(ラクドス) | A | 高 | オーク動員アグロ アドバンテージを稼ぎやすく強力 |
(ゴルガリ) | B | 中 | 墓地利用で動員と指輪を使い回す |
(グルール) | C | 中 | ほんのり上陸 |
近年のリミテッド通りに2色の組み合わせが推奨されていますが、今回は2色を出せる土地に乏しく、また環境が高速なので、3ターン目にマナアーティファクトを出す動きは結構怪しいです。真面目に何度やっても振るいませんでした。
多色化するなら、《城塞の大広間》や《ホビット庄の段々畑》を使って、伝説のクリーチャーを少数などに留めておく方が無難だと思います。
有力アーキタイプ
私が7勝したときのデッキを例に、一部のアーキタイプの構築をあげておきます。
赤黒動員アグロ
オーク動員を使って厚みを持たせて、後は普通に殴るだけの構成です。
動員を持つカードは黒のコモンが広くアクセスできる状況で、取りあえず在るだけ詰め込んでも問題ないかと思います。
後半になると腐りやすい《ゴラムへの拷問》も最悪2/2になりますし、最速で連打したら、黒赤アグロのエンドカードになる場合も多いです(上記の例では伝説が取れたので、そっちがエンドカードになっていますが)。
赤はコモンに動員がないものの、アンコモンの動員が優秀です。軍団のサイズを参照する《オークの急襲》や《軽率な扇動者、グリシュナーハ》が強力です。上記の例では《マザルブルの書》が赤の動員カードですが、動員3と全体強化になる強カード。
それら動員の圧を後押ししてくれるのが指輪の誘惑であり、土地を有効牌に変えるなどして、最後のダメ押しなどに貢献してくれます。
アンコモン以上にも方向性に合った強力なカードが多数存在しているのですが、赤黒はコモンだけでも形になるし、パワーもあります。除去も優秀であり、動員がアグロ同士の殴り合いに強いので、アグロ環境の指輪物語では最有力のアーキタイプとなっています。
白赤人間アグロ
黒が絡まない場合での、最有力がボロスアグロです。
小粒な人間を横並べすることで、指輪持ちを活用しやすく、また敵の指輪持ちを止めやすいのが特徴です。ライフの削りあいに持ち込むと、チャンプ要員の差で勝敗が変わることも少なくありません。
人間が場に出たときに誘発する強化誘発、速攻持ちの大型クリーチャーなど駆使して殴り倒すのが、ボロスの強い動きです。コモンのパーツも悪くないですが、主軸になるのがアンコモンなので、黒系に比べると完成度が伸び悩む傾向にあります。
特に赤のアンコモンが全体的に強くて、他色を選択しているプレイヤーに取られやすいのですが、上手く揃えられれば、打撃力の高いデッキになります。
白黒ミッドレンジ
一応、トークンの利用ということになっていますが、グッドスタッフになりやすいのが白黒です。黒軸に進めている場合の第二候補という立ち位置かと思います。
上記はもともと白緑にしたかったのに、珍しく緑の流れが悪すぎたので、流れに従って黒を拾って1枚だけタッチする形になりました。マナアーティファクトだと速度的に危ない側面があるので、《城塞の大広間》を使って、伝説だけ触れるという形が無難だと思います。
《人の子の女王、アルウェン》は初手で取ったのですが、タッチしてでも使う価値は大いにありました。書いてあることが割とおかしいし、黒や緑だと使い回しが容易なので……。
青黒動員コントロール
アグロ環境なのであんまりコントロールが勝てる状況ではないのですが、コントロールで7勝できたときの例として、青黒動員のパターンをば。
かなりレアに恵まれている一方で、青のコントロールよりのカードが全く流れてこなかったので、黒のカードにドローを足しただけの構成になっています。青はクリーチャーの質がかなり悪いのあって、サポートに回って指輪を付与したり、追加ドローで補ったりの色って印象です。
下馬評でトップレアと持ちきりだった《オークの射手》も入っているのですが、このときは《川の娘、ゴールドベリ》の方が活躍していました。
ドラフトあるあるなんですが、《オークの射手》が入っていても、引かないときは引かない。決定力が無い+ドローが強力な構成なので、毎回ライブラリー10枚くらいまで減ってたんですがね……。
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