PCゲーミングにおける中核メーカーNvidiaから次世代グラフィックシステムRTX3000シリーズのローンチが発表されました。いわゆるグラボに当たるパーツなんですが、発表されたスペックと価格がかなり衝撃的でした。
GPU全体の市場価格が大きく下がりそうなので、年内にリリースされるPS5、XsXといった次世代家庭用機も、世の人が考えていたより安い価格でリリースされそうです。
(後記) 実際にはRTX3000の実行性能は当初の評判ほどではなく、また疫病騒ぎや、AI需要の高まりから、ゲーミングGPU市場は大荒れ状態になりました。
RTX3000シリーズの登場
RTX 3090 | RTX 3080 | RTX 3070 | |
---|---|---|---|
コア | GA102-300 | GA102-200 | GA104-300 |
CUDAコア | 10496 | 8704 | 5888 |
RTコア | 82 | 68 | 46 |
Tensorコア | 328 | 272 | 164 |
コア周波数 | 1.40GHz | 1.44GHz | 1.50GHz |
コア周波数(Boost) | 1.70Hz | 1.71GHz | 1.73GHz |
VRAM(GDDR6) | 24GB | 10GB | 8GB |
バス幅 | 384bit | 320bit | 256bit |
VRAM帯域 | 936GB/s | 760GB/s | 512GB/s |
TDP | 350W | 320W | 220W |
補助電源 | 8pin x2 | 8pin x2 | 8pin |
初動価格 | $1499 | $699 | $499 |
理論性能(FP32) | 35.7 TFlops | 29.8 TFlops | 20.4 TFlops |
理論性能(RT) | 69 TFlops | 58 TFlops | 40 TFlops |
ついに発表されたNvidiaの最新グラフィックチップが、AmpereことRTX3000シリーズです。RTX2000シリーズが不発だっただけに世の期待も高かったわけですが、蓋を開けてみれば、予想より大分上の情報が出てきました。
特にシェーダーユニットの増化量、理論性能(Tflops)の増化量が大きく、旧世代のカードを大きく上回る結果になりました。実はリーク情報もチラホラ出ていたんですが、その倍以上の性能で実弾が出てきたらから、さぁ驚き。
特にRTX3070のコスパは目覚ましく、アッパーミドル帯のカードでありながら、旧世代のハイエンドGTX2080Tiを上回る実行性能を持つようです。旧世代の同グレード品であるRTX2070と同じ価格で2倍以上の性能を実現という、価格破壊級の製品が普通に登場しました。
まだまだ普及価格とは程遠いとはいえ、4K環境が本当に実現されるかもしれないですし、VRの本格導入も実現性を帯びてきました。遠くに感じていた世界が目前に迫ってきたという驚きがあります。
あまりにもGPUの性能が伸びすぎたので、次世代はCPUボトルネックが酷いことになりそう……。なんか、10年近くに渡って、目立った進歩がないIntelにも、いい加減に頑張って貰いたいところです。
刷新されるPCのGPU情勢
元々1人勝ち状態だったNvidiaが、周回遅れだったAMDを更に突き放す形になりましたが、本当に影響が出てくるのは、一般プレイヤーも購入するだろうミドルレンジ帯のGPUです。
STEAM統計から見るPCでの使用率でも、ミドルレンジのGTX1060が依然としてトップなのですが、RTX3000シリーズの下位モデルがこの勢いでするっと出てくれば、5年ぶりの大変動が起きるかもしれないです。
チップ | 世代 | シェーダー数 | 理論性能(TFlops) | 備考 |
---|---|---|---|---|
RTX 3090 | Ampere | 10496 | 35.7 | 次世代ハイエンド |
RTX 3080 | Ampere | 8704 | 29.8 | 未発売 |
RTX 3070 | Ampere | 5888 | 20.4 | 未発売 |
RTX 3060Ti | Ampere | 4865 | 16.8 | 不確定リーク情報 |
RTX 2080Ti | Turing | 4352 | 13.5 | 現行ハイエンド |
RTX 3060 | Ampere | - | 12.8 | 不確定リーク情報 |
GTX 2080 Super | Turing | 3072 | 11.2 | |
RTX 2080 | Turing | 2944 | 10.1 | XsX相当(公称) |
GTX 1080Ti | Pascal | 3584 | 11.3 | 旧世代ハイエンド |
GTX 2070 Super | Turing | 2560 | 9.1 | |
RTX 2070 | Turing | 2304 | 7.5 | |
GTX 1080 | Pascal | 2560 | 8.9 | |
GTX 2060 Super | Turing | 2176 | 7.2 | |
RTX 2060 | Turing | 1920 | 6.5 | PS5相当(公称) |
GTX 1070Ti | Pascal | 2432 | 8.2 | |
GTX 1070 | Pascal | 1920 | 6.5 | |
GTX 1660Ti | Turing | 1536 | 5.4 | |
GTX 1660 Super | Turing | 1408 | 5 | |
GTX 1660 | Turing | 1408 | 5 | |
GTX 1650 Super | Turing | 1280 | 4.4 | XoS相当(公称) |
GTX 1060 | Pascal | 1280 | 3.9 | XoX相当 |
GTX 1650 | Turing | 896 | 2.8 | |
GTX 1050Ti | Pascal | 768 | 2 | PS4 pro相当 |
GTX 1050 | Pascal | 640 | 1.7 | |
GT 1030 | Pascal | 384 | 1.1 | PS4相当 |
上記は現在発表されているGPUの性能をリスト化したものです。Tflopsが前後しているものもありますが、実行性能では旧世代の高Tflopsよりも、新世代の低Tlopsが勝つ場合もある――ということです。
これがRTX3060等の発表でどれくらい様変わりするのか。
仮にRTX3060が、RTX2070→3070、2080→3080同様のスペックアップを実現した場合、$300でRTX2080以上のカードが出てくることになります。それより下位にあたるGTX1660Ti、GTX1650Tiも、消費電力さえ許せば、どうなってくるか分からない。
ライバルのAMDがまるで付いていけてないのですが、ここにきてPCゲーミング界隈は、大きな転換点を迎えようとしています。
人気が今一つだったRTX2000にも付いていくのがやっとだったのに、いきなり戦闘力が倍のチップと戦う羽目になるとか、AMDは色々と大丈夫なのか。11月に発表されるだろう第二世代Navi次第ですが、第一世代Naviの不甲斐なさ故に、あんまり期待が持てないのが……。
今更延期もできないので、仮に残念性能だったとしても、限界まで値下げして売り出すことになるでしょうが、次世代コンソールのPS5もXbox SXも、内部はAMDなので、初動価格には少なからず影響がでてくると思います。
意外に安くなるかもしれないPS5

発売が年内に迫っているPS5は高くなると、割と大多数が思っているでしょうし、私もそう思っていたのですが、ライバルのNvidiaが半額まで切り下げてきたので、必然的に安くせざるを得なくなった……かもという話です。
PS5 | PS5 DE | Xbox Series X | Xbox Series S | |
---|---|---|---|---|
価格 | $499 | $399 | $499 | $299 |
CPU世代 | Zen2 | Zen2 | Zen2 | Zen2 |
CPUスペック | 8C 3.5Ghz | 8C 3.5Ghz | 8C 3.8Ghz | 8C 3.6Ghz |
GPU世代 | Navi(第1世代) | Navi(第1世代) | Navi(第2世代) | Navi(第2世代) |
CU数 | 36 | 36 | 52 | 20 |
GPUクロック | 1.63Ghz ? | 1.63Ghz ? | 1.83Ghz | 1.57Ghz |
GPU性能 | 8 Tflops ? | 8 Tflops ? | 12.2Tflops | 4Tflops |
GPUクロック (CPU稼働率ゼロのとき) | 2.2Ghz | 2.2Ghz | - | - |
GPU性能 (CPU稼働率ゼロのとき) | 10.3Tflops | 10.3Tflops | - | - |
RT | 汎用コア | 汎用コア | 専用コア | 不明 |
シェーダー | プリミティブ | プリミティブ | メッシュ | メッシュ |
メモリ | GDDR6 | GDDR6 | GDDR6 | GDDR6 |
メモリ量 | 16GB | 16GB | 16GB | 10GB |
ストレージ規格 | NVMe | NVMe | NVMe | NVMe |
ストレージ速度 | 5.5GB/s | 5.5GB/s | 2.4GB/s | 2.4GB/s |
ストレージ容量 | 825GB | 825GB | 1TB | 512GB |
光学ドライブ | BR | なし | BR | なし |
CPU換算(PC相当) | Ryzen5 3600 | Ryzen5 3600 | Ryzen5 3600X | Ryzen5 3600X |
GPU換算(PC相当) | RTX 2060 | RTX 2060 | RTX 2080 | GTX 1650S |
次世代のXbox Series Xに搭載されているGPUは未発表の第二世代Naviですし、それより低性能なPS5でもAMD RX5700相当です。それぞれカタログスペックをNvidiaのGPUに置き換えると、RTX2060とRTX2080相当になります。
PS4などの事例を見るに、発熱や消費電力の問題でクロックを上げられないので、実行性能は多少低下する可能性が高いですが、どのみち、こんな価格のGPUはPCゲーミングにおいても主流ではなく、家庭用コンソールマシンで普通に売り出せる価格に収まるのか、心配な水準でした。
ところが、今回の発表で出てきたNvidia製のGPUの価格破壊レベルが非常に高かった。海外ではGTX2080Tiの中古価格が、$800$→$500へと、一晩にして3万円以上も下落した店もあるようで、GPU市場に与えた影響は大きいみたいです(国内も買取価格が1日で2万くらい下がりました)。
GTX3000シリーズは、国内では初動のご祝儀価格で高止まりしそうですし、世界規模でも品薄状態がしばらく続きそうなので、GPU価格はジリジリと下降していく流れでしょうが、AMD系も対抗値下げをせざるを得ない。
宝の持ち腐れになりそうな高速SSDとか、高性能コントローラーとかで、調達コストが跳ね上がる危険もありますが、これならPS5の初動価格$499も不思議ではないし、むしろ妥当なラインに思えてきました。
もういい加減に、価格発表をしないといけない時期ですが、どうなるのか気になるところです。
箱の安い方はまさか300ドル切ってきたな……