クオリティの高さで人気を博したホラー作品「リトルナイトメア」の第3作です。
殺伐した世界にぴったりな蛮族スタイルの子供2名が謎の世界をウロウロしつつ、絵に描いたようなハッピーエンドを目指して彷徨うアドベンチャー。
元の開発スタジオが2作目を最後に手を引いたため、IPを保有するバンダイナムコが別の会社に白羽の矢を立てたは良いものの、表面的な部分をなぞるだけの別物になっています。
COOPになって新しい側面が追加されたものの、ナンバリングでやるべきだったのかは疑問が残りますし、ゲームプレイに対しても弊害が発生しています。
最新作ではありますが、過去作に比べて完成度に劣るので、まずは初代のプレイをお勧めします。またシリーズ経験者の人に本作をお勧めできるかというと……。
- ストーリー:4点
- グラフィック:5点
- サウンド: 5点
- ゲーム性: 4点
- 作り込み: 5点
評価基準
- 10点: 史上最高(100年に1度)
- 9点: 10年に1度の水準
- 8点: 年間トップクラス
- 7点: 十分におすすめできる
- 6点: 普通水準で、おすすめできる
- 5点: 普通水準
- 4点: 明らかな失敗が見て取れる
- 3点: 良い部分がほぼない
- 2点: 失敗では済まされない
- 1点: 史上最悪(100年に1度)
ストーリー: 4点
シリーズの評価ポイントであった部分ですが、開発会社が変わったこともあって完成度、練り込みがガッツリ落ちました。
本作はアメリカではよくある? ――らしいイマジナリーフレンドを主題としており、主人公の片割れが思い描いた妄想の世界と、彼が収監されていた精神病棟を舞台としています。
劇中がフィルターを通して脚色された妄想の世界であることは、過去作でも共通した要素なのですが、あくまで世界観を構築する際の土台の部分です。作品ごとのストーリーラインはそれとは別に存在していたのですが、リトルナイトメア3では土台の方がむき出しの状態になっています。
ホラーの根源であるトラウマ体験の部分は簡素化しており、比喩的な要素、謎解きは薄れ、叙述トリック的な要素も無くなりました。起承転結の部分のメリハリがなく、脚本としての構成にも問題があります。
開発は「アンティルドーン」とか作っちゃう所だから、「内容が無いよう」となるのは仕方ないのかもしれませんが、なんでB級ホラー、スプラッター映画のオマージュがメインのスタジオに任せてしまったのか。

リトルナイトメアは死んだんだ
いくら呼んでも帰ってはこないんだ
もうあの時間は終わって、君も人生と向き合うときなんだ
結末はある意味でシリーズの終焉に相応しいものの、やってることがファンタジー派を突き放す答え合わせ編。あるいは幼年期の終わり。過去作との繋がりもホンノリなので、続編としてはまぁまぁ失敗していると思います。
グラフィック: 5点
開発スタジオが変わった割には頑張っているのですが、及第点レベルに留まります。
似せようと頑張っているのは分かりますが、にじむような陰影の使い方や、ホラーにまつわる演出の技法など、ディレクターのセンスが出る部分に限界を感じます。
キャラクターデザインも妙にアメリカンと言いますか、3章に出てくるサーカスの危険なおじさんは良い感じですが、主人公の2人とか、1章、4章のボスとかは違和感が先行すると思います。
主人公の2人についてはファンタジーっぽさが足りないというか、妙に殺伐としているというか、リアル寄り過ぎるというか、個人的にはリトルナイトメアには似つかわしくないなと思います。
最初に情報が出たときには、今度は少年兵が題材か……と思ったくらいです。
サウンド: 5点
聞き覚えが残るようなサウンドも特になく、普通としか言いようがないです。
妙に耳に残るサウンドを要所要所で使っていたのが前2作ですが、今作に関しては、本当に何もないので、演出面での差が出たんだと思います。
とはいえ、サウンドを消したくなるみたいな要素はないので、前作と同じ及第点だと思います。
ゲーム性: 4点
中だるみが目立つ
旧作に比べてボリュームが増えましたが、中盤あたりの展開があまりにも同じなので、中だるみを感じさせる原因となっています。
過去作との差別化が少ないのは仕方ないとしても、模倣の仕方に作業的な単調さがあります。
チェイスの中にカメラアングル、コース設計がほぼ同じパターンがあるので、あれ30分前と同じじゃね? って真顔になりました。
4章の人形ギミックは優れているものの、そこにたどり着くまでが問題です。
レベルデザインの問題
過去作でもチラホラあった初見殺しですが、本作では相当な頻度で発生します。
リトルナイトメア2の時点で初見殺しが増えた印象でしたが、更に倍プッシュしてきたので、流石に看破できないレベルに達しています。
おまけに再挑戦したら楽に突破できるという訳でもなく、理不尽な解法が連続するパターンも多いです。敵のAIも見敵必殺の状態なので、見つかったら即アウトの縄跳び状態になっています。
明らかすぎる初見殺しはゲームの没入感を阻害するので、ギリギリ助かるくらいの演出が重要だと思います。
二人プレイの功罪
新規の要素として、二人のプレイヤーでそれぞれキャラクターを操作するCOOPに対応しました。しかし、それが加点に繋がったかというと怪しいです。
まず、COOPになっても独自性が希薄です。ストーリードリブンのCOOPゲームというと、割と有名どころがありますし、なんならGOTYを取っているくらいなので、それと比べられる宿命を背負っています。
また、COOPの都合上、画面の遷移にタイミング合わせが必要になっており、ボタン長押ししないと通れない扉などが激増しています。無駄に足止めを喰らうので、テンポが悪いです。
作り込み: 5点
相方の挙動不審、軽度のスタックはあるものの、致命的なバグ、頻発するバグはありません。
過去作が4時間以内に終わったことを考えると、プレイ時間が増えましたが、端的に言ってマイナス材料の増え方です。
リプレイ性も特にない初見での体験が全てですし、クオリティの低下も明らかなので、過去作以上に再プレイの意欲が沸かない人が多いと思います。
ホラー要素も薄味で、主人公たちも妙に暴力的。ホラー作品の集大成的な作風だった1作目からすると、相当に残念な形になりました。
ちゃんと動くので5点ではありますが、企画的に失敗している印象はあります。





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