ストーリー
- お姫様を助けに向かう勇者の王道ストーリー
- ゼルダ特有の奇人変人
- 回想メインで臨場感に欠ける
- サブクエストがやや単調
オープンワールド特有の現象で、ゲームとしては面白くとも、ストーリー性は過去作に比べてやや劣ります。特にシナリオ重視のゲーム作りが全盛だった時代に作られた時のオカリナ、ムジュラの仮面に比べると、オープンワールドのための制約から非常に淡泊で、臨場感のない展開になっています。ゲームに対してマイナスの影響を与えないだけ救われていますが、優れているとは言い難いです。
オープンワールドのコンセプトを守るなら致し方ないのですが、臨場感に優れたシナリオ、使命感の強いシナリオにしてしまうと、自由な行動を阻害します。たとえば旅先で人助けする展開にしても、魔王が大暴れしている最中だったりすると、優先順位がおかしいだろとなって、違和感が生まれます。必然的に淡泊な展開にせざるを得ないわけで、本作における回想ラッシュはストーリーティングとしては良くないものの、他に選択肢がなかった側面が見え隠れします。
サブクエストもそんな感じであり、どうもお使い感が強くなりがちです。箱庭ゲーだったムジュラの仮面など、時間を繰り返すという設定があるので、自由度の高いサブクエストを盛り込めたのですが、それと比べると明確に劣る印象があります。あっちは世界が滅びる危機にあってもやり直せますし、失敗した場合から試行錯誤できるし、常に時間制限があるので臨場感を表現できていました。
本作ではそういった制約を化すことが難しいため、どうしても実装された形に落ち着くのでしょう。オープンワールドに残された課題かもしれません。
グラフィック
- 適度なトゥーンレンダリング
- バリエーションに富んだロケーションの数々
- 性能不足を絵作りでカバーしている
- ダンジョン関系のデザインが単調(ボスも含む)
- 処理落ちが酷い場所がある
飛び抜けているとは言い難いですが、Switchの性能を鑑みれば十二分なグラフィック水準です。ややキャラクターデザインに癖があるものの、万人受けする景観、色使いをしており、世界観の表現に大きく貢献しています。
多分、多くの人が一番気になったのはゼルダの眉毛じゃなかろうか。インパクトはあるんですけど、田舎の領主か名主の娘って感じで、お姫様っぽくはないですよね……。
サウンド
- 適切なサウンドエフェクト
- 雰囲気に合っているが、小粒でインパクト不足
- キャラクターに声が付いた
方向性としてサウンドをバリバリならすタイプではないのですが、スコアはちょっと魅力不足。過去作のボス戦BGMなんかは割と覚えているんですが、本作はまるで記憶に残っていません。音が題材だったゲームがいくらかあるので仕方ないですけども。
本作から名実共にボイスアクトが追加されましたが、上手くマッチしてたと思います。
ゲーム性
- 隙の無いオープンワールド
- 軽快なアクション性
- 探索と戦闘のシームレス化
- フィールドやオブジェクへの干渉が自然
- ダンジョンよりフィールドの方が面白い
- 物理パズルの限界
オープンワールド故の長所
オープンワールドという舞台装置の開発に主眼を置いたゲームです。昨今だとちょっとした流行になっていて、右も左もオープンワールドを目指しているような状況ですが、その中でも特に優れたゲームデザインで世界を表現しています。
プレイヤーのアバターとなるキャラクター(リンク)と、構築されたハイラル世界との連結が非常にスムーズ。シンプルに纏められたゲームシステムは現実世界の物理法則に従っており、火の延焼、雷の挙動などの誇張表現も、アニメ調の世界構成がその違和感を消しています。
ダンジョンの一部を除いてどこでも昇ることができるので、探索における自由度が非常に高い。戦闘と探索がシームレスに繋がっており、広大な世界の冒険を自然なものにしています。
オープンワールドと謳うゲームは数多くあれど、それが武器になっているゲームは少ないです。むしろマイナスに作用して完成度を下げるだけのパターンが多いのですが、本作はオープンワールドの良さを突き詰めて、プラスの側面を明瞭に表現しています。
シンプルで自由度の高い戦闘
オープンワールドのゲームでは過去最も戦闘が面白いと言って良いです。先駆者のTESなど、これだけで色々と台無しにするレベルで酷いので、オープンワールドとして大きなアピールポイントになっています。
様々な要素が絡み合っていて、これはこれでネタ宝庫。敵を倒すというより、敵と遊んでいるような感覚に陥ります。
冒険に立ちはだかる敵のAIも程ほどに倒しやすくなっており、万人受けする難易度に調整されています。まずまずアクションゲームの入門作に相応しい作りで手堅いレベルデザインです。初見殺しな敵もいますが、モーションが目で見て分かりやすく、攻撃パターンも多すぎず少なすぎず。
最初は苦戦していた敵でも自然と勝てるようになるのが心地よい。万人向けで絶妙な塩梅に仕上がっているので、プレイヤーの自然な上達を促してくれます。
フィールドの広大さや、プレイ時間の長さに対して敵のバリエーションが少ないことは欠点ですが、この規模のオープンワールドだと仕方ないところ。それでも足りないというのがオープンワールドというレベルデザインが持つ問題の一端です。
物理パズルの限界
物理パズルというのは、ゲーム内で再現された物理演算システムを使った自由度の高いパズルです。例えば重力に従って物が落ちたり、力に押されてボールが転がったり、そういったシンプルな力学を使ったパズルゲームのことです。海外ゲームでは割と見かける内容なんですが、本作ではそれが全面に押し出されています。
フィールド全域がアスレチックになるので、オープンワールドの仕組みとは相性が良かったですが、代わりに割を喰ったのがダンジョンの構造。物理パズル特有の大味さ、世界の仕組みに従うという制約のために、過去作にあった芸術的なマップデザインが難しくなっています。
数多に存在するミニダンジョンは、どうしても似通ったところが出てきますし、まるで面白みの無い解法のものが相当数含まれています。
またメインクエストのダンジョンも捻りが無く、ダンジョンの面白さ、パズルの出来という点では過去作から見ると残念な仕上がり。過去作だとダンジョン > フィールドだった面白さがが、フィールド > ダンジョンになっており、祠に入るよりもフィールド探索を優先したくなるという逆転現象が発生しています。
作り込み
- 目立ったバグが無い
- オープンワールドの凄まじい完成度
- 量のために質が犠牲になっている面も
- ダンジョンの質が不揃い
- 敵のバリエーション不足
- アクションとしてのボリュームに欠ける
- 料理の多くが死に要素
TESシリーズ(オブリビオン、スカイリムなど)とは異なるアプローチではあるものの、優れたオープンワールドを提供しています。
路線的には過去作の風のタクトや、スカイウォーソードもほぼオープンワールドだったわけですが、それらが持っていた欠点を上手く改善したリベンジ作と言えるのかもしれません。
各所に設けられたファストトラベルポイント、パラセールによる飛行、盾による滑走など、探索の負担を軽減する要素が完備されて快適な冒険をサポートしてくれます。馬はもうちょっと高低差に強ければ良かったのですが、それでも便利な移動手段です。
ゲーム中で表現された新しいハイラルは広大で変化に富んでおり、探索するに値するだけの秘密をおよそ兼ね揃えています。このおよそというのは少々ネガティブな表現ですが、それさえ難しいのがオープンワールドというゲームです。
広大な世界を用意する関係から、密度、質、熱量、独自性がどうしても犠牲になりやすい。バグも増えるし、闇雲に作っても良い結果は得られません。
本作の完成度はオープンワールドというジャンルにおいてはずば抜けていますが、ゼルダシリーズとして見ると物足りない部分もチラホラあります。ここまでやってもまだ足りない。
それを改善するにはひたすらリソースをつぎ込むしかないのですが、リニアに反映されるとは言い難い。Botwに関して言うなら、フォトリアルにしなかったことに大分救われた気がしますが、これを真似するのは普通の会社ではリスクが高過ぎます。
本作はそんなオープンワールドゲームの世界に新たな一石を投じたものの、職人芸と多大な労力をつぎ込んでいる関係から、今後同水準のゲームがぽんぽん出てくるとは思いにくい。後発作にとっては大きすぎる壁になりそう予感がします。
総括
優等生を極めたようなオープンワールドのゲームで、ようやく時のオカリナ世代から1つ抜きんでた部分を持てました。
ストーリーや、サウンド、ダンジョンの質という点において劣るので、個人的には時のオカリナ、ムジュラの仮面ほど熱中はしなかったですが、このゲームの優れた完成度はゲーム史に残ると思います。
恐らくは今後のゲーム作りの試金石になるだろう存在であり、オープンワールドのゲームとしてはスカイリム以来の評価を与えても良いと思います。
欠点だらけのTESシリーズと違い、万人受けするゲームに仕上がっていますし、オープンワールドのゲームを聞かれたら、今後はまずこれをあげると思います。
まだSwitchが出たばかりで、エンジン等を流用してゲームを出せそうですし、内容が内容だけに難しい側面もありますが、次回作には大いに期待したいと思います。
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