
- ストーリー:3点
- グラフィック:8点
- サウンド:5点
- ゲーム性:4点
- 作り込み:6点
ゲーム概要
モンスターハンターシリーズは、以降そのクローンとも言える存在が多数登場した狩りゲーの開祖にあたるアクションゲームです。
フィールドに棲息する巨大モンスターを、馬鹿でかい武器を振り回して倒すことが主な目的で、操作性は決して良いとは言えませんが、お手軽さと慣れれば誰でも上手くなれる敷居の低さが特徴。本稿では基本シングル前提の評価になりますが、CooPゲーとしてもかなり敷居は低い方です。特に役割分担も要らないですし、相当にカジュアルなMOという側面が強いです。
これが普段CooPなどのゲームをしない一般層に受けて、PSP時代には驚異的なソフトウェア装着率を誇っていました。当時私は大学生でしたが、PSPを持っている人はみんな持っているという状況でした。飲み会の席でも普通にプレイしている人がいるくらい。そんなこんなでPSP時代に大きく躍進し、ファミリー向けのWii、3DSにハードを移して地盤を固め、以降CooPの入門作的な立ち位置を確保した作品群です。
そんなモンハンシリーズも長らく続いてきてはや何作目やら。長らく進歩が無かったので、マンネリ感が付きまとうのが大きな欠点。本作ではハードをPS4という久々の主力据え置き機に移し、新たなる番外タイトルとしてリリースされました。
感想と評価
ストーリー
- 少年漫画的
- 中身が本当に無い
- 登場人物が総じてアホ
- 世界観の表現とするにはむしろマイナス
なにをどう言えば良いのやら……取り敢えず中身が空っぽです。ドラマ性はまるで欠落していて、山場と言える部分も特にありません。例えるならば、キャラクター性も喪失した日常系アニメ?
特に描写があるわけでもないし、存在価値はあんまりない。取り敢えず、これを目当てに買う価値はまるで無いと思います。旨いとか、不味いとか以前に味がしません。
駄目な上司に、駄目な同僚に、駄目な相棒に……組織として終わってるだろ感だけは、ひしひしと伝わってきます。多分、団結心と主人公が頼りにされてる感を演出したかったんでしょうけど、アホすぎる作戦に誰も異を唱えないから、全員中学生レベルの知能なんだなぁ……って思いました。海外ドラマみたいにギスギスさせろとまでは行きませんが、少しくらい対立と和解を描かないと、設定羅列するだけになってます。
というか新大陸にやってきた理由自体が謎。全てが投機的すぎて、なにをもって採算が取れているんだろう。あれか、新大陸はギルドの邪魔者を追い出すための流刑地か何かか?
グラフィック
- 全体的に高水準
- 美麗な汎用ムービー
- モンスターデザインが大きく向上
- 海外ドラマ的なキャラクターデザイン
- 作り込まれたフィールド
- 雑な武器、防具デザイン
本作における目玉要素であり、唯一明確に改善、進歩した要素と言えるでしょう。近年のCAPCOMはゲームとしては微妙な作品ばかり連発していますが、美術デザイン面だけはすこぶる快調な模様。どうせ二回目からは飛ばすだろう料理ムービーに、そこまで力を入れる必要があるのかとは思いますが、優れた映像作品になっています。
モンスターのデザインも、無難に力強いモチーフを使っていて好印象。 ゾロ・マグダラオスとネルギガンテは元ネタ「ゴジラvsデストロイア」の2大怪獣だと思われます。ゾロ・マグダラオスに関しては、設定がほぼバーニングゴジラだし、劇中でパロディまであるのでほぼ間違いなっすね。ゴジラvsデストロイアは私が小学生だった頃の映画なんで、もう20年も前の映画なんだなぁ……。
キャラクターデザインはフォトリアルで、どことなく海外ドラマを彷彿とさせるのですが、主だった購買層が普段ゲームをしない人であることを鑑みれば適当な選択だったかと。ただ美男美女が揃っている筈なのに、今一つ個性に欠ける感があるのは何故なのだろう……。表情が誇張されているか、殆ど無いかの二極化が原因かとも思ったんですが、あんまり自信がないです。
フィールドの作りは空間を上手く利用し、優れた景観を提供しています。それがゲーム的にプラスかというと難しい面が見え隠れしますが、特に最初の森なんかはよくよく作り込まれています。まるで迷路みたいに入り組んでいますが、おかげで導虫の存在感が際立ちました。また入り組んだ森から、開けた荒野に繋げたのも緩急があって良かったです。後半になるにつれてだんだん雑になるというか、旧来のモンハンまで失速した感はありますが、時間切れで手が回らなかった感じか。
サウンド
- 新スコアは平凡
- BGMの使いどころが微妙
- 英雄の証ぇ……
全体的に平凡で、突出した部分が無いです。名曲「英雄の証」も今回はアレンジがヒットしなかったので、今一つで盛り上がりに欠けました。というか、変則的なイベント戦で使うのは止めておいた方が良かったかと。
ゲーム性
- 実はかなりの初心者向け
- 武器のバリエーションが多い
- 挙動がもっさりして爽快感が無い
- アクションゲームとしての発展性が乏しい
- 操作系が整理されていない
- 討伐のテンポが悪い
- 探索が中途半端で面白味に欠ける
従来作からお手軽COOP以外に評価できる部分がないゲームでしたが、その部分は概ね踏襲しています。多少はシングルプレイに耐えられるよう苦慮しているようですが、相変わらずゲームとしての拡張性に乏しく、アクションとしてやり込むには難しい面を持ちます。
ゲームデザインとしても従来作どおりアクションゲームが苦手な人向け。
それが作為的なものか、偶発的に生まれたものかは定かではないですが、重量感を出すために敵も味方も動きが鈍重なのが、モンスターの挙動を雑にすることを許し、操作速度に付いてこられずに脱落するプレイヤーをフォローしました。モンスターのAIは端的に言って不出来なんですが、ハンターの無敵回避やら、双方のリーチの差が顕著なことから、多少ガバっててもゲームとして耐えられるというルーズさを生み出しています。難易度調整のためにアホな攻撃を追加しているケースもありましたが、基本的にはシビアな操作や臨機応変な対応は求められないので、加減点の小さい緩やかなゲームプレイになっています。
あくまでシングルとしての評価なので、ここでは突出して触れませんが、マルチの方向性もかねがねそんな感じなので、スローライフアクションというのが正しいジャンルなのかもしれません。
そんなわけでPSPの頃には驚異的なPSP対所有率を誇っていて、学内では右も左もPSP+モンハンだった時代もあったわけですが、当初からアクションゲームとしては、初心者向けであることを除いて褒められるような部分がありませんでした。アクションゲームに慣れているほど、その不自由さ、不完全さ、単調さにうんざりします。無駄に敵が堅いし、攻守の切り替えテンポが悪いし、最後はひたすらサンドバッグにするのが最適解だし、終始に渡ってメリハリがないので爽快感とは無縁です。あり手にい言えば、よく出来たトレーニングモードみたいなゲームであり、それ以外の遊びは存在しません。
対人ゲームのような駆け引きや、1度目の戦闘の面白さに重きをおいた一般的なアクションゲームのような面白さはなく、絶えず作業感が付きまとうという致命的な欠点を持ちます。武器は色々あっても、やってることが同じなのですぐに飽きてしまいます。アクションゲームとして見ると、例年から良くて凡作であったモンハンですが、それは本作でも変わっていません。
作り込み
- 目立つバグがない
- 煩わしい要素が少しだけ改善
- 空間を無駄なく使ったフィールド
- モンスターがゲーム的個性に欠ける
- UIが煩雑で分かりにくい
- 不自由すぎる挙動
煩わしかった素材集めの負担がある程度緩和され、使った素材が還ってくるなどの優しい仕様になりました。そんなことするなら、最初から特定討伐でアンロック、拠点の製造能力が成長して、以降素材を使用しないにする方が自然だったとは思いますが、悪かった部分を緩和したという点で評価できます。
その他、中途半端な改善点が多いものの、シングルのゲームとしては悪くなった部分はありません。惜しむらくは旧習に捕らわれすぎている、あまりに定着しすぎて変えるに変えられなくなっている部分が多数存在することで、キャラクターのモーションやモンスターの挙動がどうしても不自然になっています。
バイオームの概念を取り入れようとしているのに、いきなり弱って足を引きずり始める、敵の目の前でも平気で眠りこけるなどの、所謂モンハンらしい誇張行動が足を引っ張って、チグハグさが見えます。今回ガッツポーズ削除等、そこら辺のモーションもいくらか修正されていますが、この先リアル路線に寄せようとすると、尚更引っ掛かって来そうな部分です。今回の新要素である捕食にしても、これリアルに考えると、ハンター喰われてるパターンになって、Z区分送りになりかねないので、そもそもモンハンでリアルに寄せるのは無理があるのかもしれません。
翼竜などの要素も、結局フィールドに適正がないので、追加してしてはみたものの……みたいな部分があります。UIの雑さや、武器毎の操作が統一されていないことも、どこかですっぱり変える勇気が必要でしょう。
いったいこのゲームをどういう方向性に進めたいのか、あまりに社運を賭けたプロジェクトになりすぎた故に、明瞭な指針を示せなくなっている気はします。下手に変えてしまって失敗したら嫌なので、ぶっちゃけ怖いですしね。
総括
取り敢えず、ゲームとして満足できる水準になったとは言いがたいですが、グラフィックは大きく向上しましたし、モンスターハンターシリーズでは概ね最高傑作だと思います。
旧態依然とした部分はあまりに多いし、ゲームとしての発展性にも乏しいですが、それは旧来作に関しても同じ事。アクション性の高いゲーム、シミュレーションとして優れたゲーム、リプレイ性の高いゲームが数多にあって、それぞれの該当作に比べれば、露骨に見劣りする面は否めないものの、取り敢えず過去作以下になることだけは免れています。
X系等とはちょっと向きが違うので多少好みは分かれると思いますが、XはXで、やっぱり抜本的な解決になっていないので……。
最大の懸念材料なのは、件の開発元CAPCOMがこのゲームの青写真をどのように描いているのか不明瞭すぎること。モンハンが大衆受けした要素を鑑みるのなら、素直にハンターのスローライフ系ゲームにするのが無難かと思いますが、大規模な方向転換、大幅なコンテンツの追加になりかねないので、最近やたら守りに入っている今のCAPCOMにそれができるのかという話。
狩りゲーとして成熟させるにしても、アクションとして洗練させるか、自由度を上げてシミュレーションとして完成度上げるか、それ以外の遊びを付加するのか。どの道を選ぶにしても、本作「モンハンワールド」はその過渡期にあたる凡作といった雰囲気です。プロジェクトとしては妥当だったのかもしれませんが、もうちょっと挑戦すべきだったというのが正直な感想です。
武器デザインが使い回しだらけなのは時間が無かったんですかね。これ作ろうかなと思ってもデザインの違いが申し訳程度に貼り付けた皮とか鱗だとモチベーションが…